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2018年06月 アーカイブ

2012.06.30

山の奥の奥会津

喜多方を満喫して6月9日10日と会津若松から奥会津へ。
農閑工芸の調査は続く。
会津若松市内にある三浦木工さんの工房見学から。
三浦さんは漆器の木地を挽く仕事に就く轆轤師。いつ注文が来ても対応できるようにたくさんの荒挽きされた材料が乾燥されながら製品になるのを待っている。たくさんという表現では納まりきれない圧倒的な量の木地が積まれている。
職人さんの工房に伺ったことの無い学生も多く、仕事場の放つ空気にみな緊張。

その後福島県立博物館を見学。そして三島へ。
会津若松から山間の道路を山に向かって走っていく。只見川の氾濫した跡がはっきりと残る。
昼食にそばを食べ、工人祭の開かれている三島生活工芸館へ。
以前マタタビ細工の調査の際、一度寄ったことがある。三島は桐のタンスの生産地でもあり、町は植えられている桐の花で彩られていた。
工人祭では、奥会津の手仕事による様々な物が紹介されていた。マタタビ、ヤマブドウ、クルミ、カラムシ、ヒロロ、タケ、ワラ、シナ、ガマ、何でも来いの状態。作り手が店主となって100近いテントが張られ、山深い風土で育ってきた手仕事の品が並ぶ。
山の中から使えそうな素材を探し、幾代にも渡って工夫され受け継がれてきた仕事。縄文の頃より変わらない仕事もある。人の暮らしが太古より繋がっている事を再認識。
木材というと、伐採された樹木の幹部分を指し、家具や建築等に使われる。
例えば曲げ物に使う材料も薄く加工されたものだが木材と呼べる。鉋屑は木材とは呼ばれない。ある程度量のあるものが木材と呼ばれる。
以前伺った箕の制作現場ではイタヤカエデを薄く割いて編み込んでいった。その薄く割かれるイタヤカエデは、途中まで木材なのだが、薄く割かれるに従い、木材というより木の繊維によって成り立っている帯状のテープとなる。
どこまでが木材で、どこからが繊維という線引きは難しい。
樹木や草を編むさまざまな技術が残る奥会津で感じたことは、木や樹皮、草等の植物をつかった器作りが、そのまま織物へと繋がっているということ。
器から服へ。
木が編まれ、樹皮や竹が編まれ、草が編まれ、糸が編まれていく。樹木から布までがやわらかいグラデーションでつながっている。
奥会津は樹木を用いた造形から織物に至るまでの地続きの仕事が残る貴重な場所である。
そして、衣食住。
服、器、建築もやわらかいグラデーションとしてつながっている。
奥深い山間部で、様々な物を見て感覚的に実感した。
三島で一泊し昭和村へ。風情のある集落を車窓に眺めながら移動。
昭和村のからむし会館を見学。売店にマユミの木を束ねた珍しい箒もあった。珍しいとは、こちらの一方的な見方であって、作っている方にとっては珍しくもないであろう。
そして南会津町にある奥会津博物館を見学。ここも2回目になるが、木工の資料が充実している素晴らしい展示内容。
山を超え、峠を越え、白樺やブナの林を見ながら帰途につく。
実に濃厚な調査旅行。濃厚すぎて書ききれない。
7月も奥会津に行く。

会津の奥は深い。奥会津も奥が深い。

2012.06.15

雄国竹細工

6月7、8日と喜多方。9、10は会津若松から奥会津へ。
農閑工芸の調査のため4年生6名を連れての渋くて濃い旅。喜多方ではワラスゲ細工と竹細工を喜多方市の技術者達のご指導により実施。
両方ともに90才の先生も含まれていた。仮に60才からお仕事を初めても30年の大ベテランである。20才からとしたら70年。
ワラ細工では基本的な注連縄作りをご指導いただく。正月飾りに祖父が作っていたことを思い出す。ワラを縄にするという基本的な作業だが、やってみるとむずかしい。けど、できるとうれしい。
大先輩の先生方が楽しそうに教えてくれるので自然こちらも楽しくなってくる。
当たり前のことだが、教わりたい人がいて、そこに教えたい人がいる場は自然と締まった空気になり熱を帯びる。
もうひとつ、そこには方言を聞き漏らすことなく理解しなければ、という緊張感が漂う。
聞き取ることのできない言葉を前後の言葉で理解しながら会話を続ける。
90才の先生は遠慮などしない。そんなこと当たり前である。こちらにあちらの言葉をビュンビュン投げてくる。
先生が笑ったらすかさず笑い返す。意味は分からずとも。そして笑った後で意味を理解する。できないことも多いが気持ちは伝わる。
初日は筑波からの移動と午後のワラスゲ細工の実習で終了。
示現寺や温泉神社の大杉を見学後、旅館へ。
完成した注連縄を一同大切に抱えながら旅館に入る。ちょっと怪しい集団に見える。引率者はボーズ。旅館の方の表情に少しの変化が見られる。お話ししてやわらかい雰囲気となる。
朝の8時に不思議な歌声がスピーカーから旅館に響きわたる。
それは、カラオケ?リハーサル?
色んな所にとまってきたが、初めての体験。大きな音量の生声で歌謡曲。ムードが旅館に染入る。ムードのいらない朝にムードを注入されカゴ作りへと送り出された。
秋田でのイタヤ楓でのカゴ作りに続き、根曲がり竹でのカゴ作り。カゴの他にザルに挑戦した学生もいた。
すばらしい道具としての手を持つ先生方3名に丁寧なご指導をいただく。手の他に使う道具はただひとつ、ナタのみ。シンプル。
6角形の編み目を左右、上下に増やしながら竹を編んでいく。
頭で理解するというよりも、手と頭で理解しながら仕事を進める。秋田でのイタヤカエデを使ったカゴ制作の時も同じだった。途中、なぜか手が動かなくなったり頭が真っ白になる。そうなると何をしているのか分からなくなる。
先生方の強力な協力により全員完成。学生の顔に現われる作る喜びの表情、できた物を眺める喜びの表情を見てさらに喜ぶ。
カゴが完成した後、先生達に連れられて雄国沼へ。
標高1000M以上に生える根曲がり竹の林を見学。先生方は皆ご高齢であるが、竹林の近くに車を止めるやいなや全員がナタを片手に林の中へ散った。目には竹林しか映っていない。水を得た魚。笹を得たパンダ。笹からぼたもち。ほとんど子供のふるまい。

ナタを持った白髪の小学生、雄国沼の竹林に出現!注意せよ!とは、翌日の新聞には載っていなかった。
近くにはヤマブドウも自生。まさに造形素材の宝庫。

以前より喜多方の雄国で作られる雄国竹細工には感心が高かった。初めて見たのは3年前のこと。7寸程のザルを購入。やれた感じの独特な風情を持つ。
もともと雄国竹細工は農業の合間に作られ、農具の制作をベースに発展してきた。
僕が購入した小さなザル等は比較的最近になってから作られるようになったと聞く。
喜多方の気候・風土を背景に、一年を通した農業の仕事に組み込まれながら農閑期に制作されてきた。
専門的な竹工芸の職人として、竹細工に従事し作られてきたものというわけではない。必要以上に作り込まれたものではなく、一定の美しさを持ちながら用に耐える強度を持つ。なので値段も安く、日々の暮らしの中で遠慮せず使いたくなる風情を持っている。
雄国竹細工に使われる竹は根曲がり竹というもの。その名のごとく根から曲がって生えている。タケノコも生意気に曲がって生えてくる。
そして、このタケノコは灰汁が少なく山菜としての人気も高い。ヤマブドウも実はもちろんのこと、葉も天ぷらで食べるとおいしい。
根曲がり竹はチシマザサの別名で、笹にしては大きく、1.5〜3Mほどになるという。細い竹で秋田の箕作りにも使用されていた。稲刈り後の10月にひと冬の間に使う分の根曲がり竹を収穫する。
雄国沼で先生方と別れ喜多方市郷土民族館へ。そして喜多方に来たらいつも寄る平出竹店を見学して宿へ。
この日は農泊。喜多方を見下ろすすばらしいロケーション。そして食事の充実さに一同大満足。
夕食後、制作した竹細工を並べ、ザルに穴が開くまで見つめながら夜は更けていった。
朝食も大満足。デザートはムードではなくフルーツのたくさん入ったヨーグルト。
1泊2食ムード付きにご注意下さい。