平成21年度 芸術専門学群 卒業制作展 専攻紹介

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芸術専門学群

    芸術学・美術史
    芸術専門学群の学生たちはみな、日々の生活のうちに楽しさや喜び、悩みや苦しみを抱きながら制作活動を続けています。つくられる作品のひとつひとつはみな、学生たちがそれぞれの大学生活を懸命に生きたことの、動かぬ証拠なのです。

    しかし考えてみれば、歴史の教科書に名を残すような巨匠たちも、私たちと同じように青春を過ごし、やがて老いを迎え、それぞれの人生に喜びや悲しみを見いだしながら作品づくりをしていたはずです。その点、美術作品は作家のおかれた境遇、あるいはその時代や地域の社会状況を映す鏡であるともいえます。作家たちは何を考えながらその作品をつくり、また現代を生きる私たちはそこから何を得ることができるのでしょうか。

    このような疑問に端を発するのが芸術学・美術史です。


    洋画
    美術専攻の洋画コースでは、古典から現代までの絵画表現について、基礎知識と技術を中心に学びます。「基礎は広くしっかり築き、その上に高い専門性を積む」という考えのもとに、流行に左右されることなく、本質的な創造を求めてきました。
    洋画の実習では、主に顔料を油で練り合わせた絵具を、キャンバス等の支持体にのせて描きます。“油絵”と言った方が分かりやすいかもしれません。透明感や光沢など、様々な表情に富む画材です。
    絵画はラスコーやアルタミラの壁画に見られるように最も原初的な表現であり、また純粋芸術のひとつと言われます。絵画は、現代まで多くの作家に選ばれ続けてきた表現です。紙と鉛筆があれば、誰でも絵を描くことのできる身近さもあります。

    自然から学ぶことを基本として、学生ひとりひとりの感性や悟性、潜在意識等、人間性を作品に高め、技術に支えられた創造を目指しています。


    日本画
    日本画は岩絵具をはじめとした独自の素材や伝統的な技術、表現方法に基づいていますが、それだけには留まっていません。
    現在ではそれらを土台として、より深遠な芸術の表現として、発展、展開をしています。
    芸術とは何かを常に問いかけながら自己の表現を追及しています。


    彫塑
    土・石・木・金属、それ自体に多くの歴史を刻んでいるものを相手に制作を行っています。それらの素材は固有の存在感を保ち続け、私たちは其の存在感の前に立ちすくむことがしばしばあります。しかし、制作を進めていく中で助けられている一面があることに気付きます。
    制作の上で大きな存在である素材と、自らの内にある衝動の間に生まれてくるものを確かめながら、塑像・木彫・石彫・金属彫刻などはるか昔から存在する多くの術の力を借りて対峙しました。
    その結果がここにあります。



    小さい頃に一生懸命お手本を見ながら書いた「習字」や「書写」。
    そこから一歩踏み出し、私たち書コースでは書を芸術として捉え学んできました。

    実技では、歴代の名筆を習う中で様々な表現法を身につけます。
    また理論では、名筆が生まれるまでの歴史的背景や当代の書人に関する理解を深めています。
    私たちはこうした実技・理論の双方から、各々の方法で書へのアプローチを試みてきました。

    今回、4年間の集大成として、各人が漢字・仮名臨書(古典のデッサン)各1点と創作1点、計3点の作品をこの場に発表させていただきます。

    自らの選んだ言葉を自らの表現法で書き表す書作品は、「書は人なり」という言葉があるように、その表現は十人十色。
    本展示からも、それぞれの色を感じて頂けたら幸いに存じます。


    版画
    版画というと多くの皆さんが小学校で教わった素朴な木版画を思い浮かべるかもしれません。しかし、一口に版画といってもその版の形式は実に多様です。

    多くの人に親しみ深い木版画をはじめ、古い西洋の書物に多く登場する銅版画、Tシャツプリントにも使用されるシルクスクリーン、版に描いた感触をそのままに表現することに優れたリトグラフなど、版を介在させる全ての表現が版画といえるのです。

    制作過程に版を介在させることは、支持媒体(紙やキャンバスなど)に直接描くことよりも幾分遠回りですが、私たちは版を制作するプロセスの面白さと、支持媒体に形が写し取られること、刷りによって得られる思いがけない効果を「版」の特性として愛して制作して参りました。

    ぜひ作品のそばによって洋画や日本画とは違う、版画独自の雰囲気を味わって頂ければ幸いです。


    総合造形
    現在のアートは、社会や個人の生き方の多様化に対応する形で様々な展開を見せています。新しい素材を使った造形制作や、写真や映像、インターネットなど新技術を使った表現、さらにはパフォーマンスなどの身体表現まで、その表現方法は様々です。
    総合造形では、そのような様々な表現方法を横断的に学びながら、各個人が独自の課題を見つけ、それぞれの表現に取り組んでいます。

    現在を生きる私たちの、日々の感覚や感情をすくいとることができる表現方法とはどういったものでしょうか。
    この領域の表現の多様性は、各個人がそれぞれの生活において感じていることに真摯に向き合った結果として現れてきたものです。

    総合造形領域では、このように様々な個人のあり方が交錯する中で、これからの文化を形作る表現を目指しています。


    クラフト
    クラフト領域は主に、陶磁、硝子、木の素材を扱います。

    実習や演習を通して、それぞれの素材を知るところを第一歩とし、素材と向き合い、その特性を活かしながら、いかに魅力をひき出すか。
    そして自分自身と向き合い、どのように自分の表現を行い、かたちにしていくか。

    日々、素材との対話、自分自身との対話を繰り返し、模索をしています。
    時には素材に翻弄されることもありますが、そこもまた、魅力の一つです。

    今年で四期目の卒業生と、まだまだ歴史の浅い領域ですが、それぞれの対話から生まれた表現を、どうぞご鑑賞ください。


    構成
    構成とは、あらゆる造形の基礎を研究する分野です。

    造形物は、色・形・素材・テクスチュア・コンポジションなど様々な要素で形づくられています。構成領域では、各要素を掘り下げて研究し、またどのような秩序をもって組み合わされ作品となるのか、その原理を体系的に研究しています。

    基礎科学である数学なしに、応用科学である宇宙工学が成立しないように、構成学なしでは、造形は成立しません。また、数学がそれ独自で専門分野であるように、構成学も単なる基礎ではなく専門分野の一つなのです。


    ビジュアルデザイン
    ビジュアルデザイン領域では、イラストレーション、タイポグラフィ、印刷、写真、広告デザイン、ダイアグラム、エディトリアルデザイン、絵本、マンガなど多岐にわたる作品を扱います。知識・技法を幅広く学び、色彩や文字などのビジュアルエレメンツを駆使して、美しく効果的な視覚伝達を目指します。ビジュアルデザインは、社会のあらゆるところに存在し、人々の間をつなぐ役割を担っています。私たちは、大学での学びを通してその重要性と面白さを知り、より効果的なビジュアルコミュニケーションを追求して制作活動に取り組んできました。4年間の集大成をどうぞご観覧ください。


    情報デザイン
    情報デザインとは、人間が作り出す全てのモノをより楽しく使いやすくするための新たなデザイン領域です。それは綿密な調査・分析などから構築される理論や、直感的な感性によってもたらされます。

    また21世紀のデザインは、単に機能的な使いやすさばかりでなく、見て、触れて、聞いて、五感と感性に響くシステム設計が求められています。そしてそれらはデジタルコンテンツや、グラフィックス、プロダクトなどあらゆる形態によって実現されます。

    例えば子供からお年寄りまで誰にでも使いやすいデザイン、ネットワーク上でのWebデザイン、デジタルカメラや携帯機器などのわかりやすい情報機器のデザイン、ゲームのデザイン、環境にやさしいデザインの尊重など、情報デザインはあらゆるところで活躍しています。

    さて、形はさまざまですが、大学4年間で得られた私たちのそれぞれの「答え」をご覧ください。


    プロダクトデザイン
    プロダクトデザイン領域は、人が造りだす道具や機器、設備等の「モノ」およびモノと人・生活との「関わりのありかた」をデザインする領域である。
    人間は言語を操る動物であると言われるが、同時に道具を操る動物でもある。
    ゼムクリップからスペースステーションまで、自動車等の輸送機器、生活機器、産業機器、情報機器、家具、レジャー機器、環境設備機器等私たちの周囲に存在するあらゆるモノが、プロダクトデザインの対象となる。


    環境デザイン
    環境デザイン領域の私たちは、「より良い関係を生む空間」を作るために日々考え、具体的な提案をしています。

    学習対象とする空間のスケールは室内から、街路、広場、公園、都市、地域まで様々です。

    どんな場所にも人や人以外の多くの要素が関わっているため、様々な範囲の視野を持ちながら、それぞれの立場に立って考え、「柔軟なあたま」でデザインすることを大切にしています。


    建築デザイン
    建築デザイン領域は、建築に関する設計、計画、構想を学んでいる。表層的なデザイン力ではなく、その中で起こるプログラム、人々の行為、周辺環境、地域性など、私たちの暮らしを取り巻くあらゆる要素を総合的に考えて、空間をデザインする力を身につけるため、日々の課題に取り組んできた。卒業制作は、社会に対して新しい価値を提案すべく、頭を振り絞り、睡魔に打ち勝ち、魂をこめて仕上げた4年間の集大成だ。渾身の作品をお楽しみいただきたい。