平成21年度 博士前期課程芸術専攻 修了制作展 専攻紹介

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博士前期課程芸術専攻

    美術史
    「美術史」という学問分野は、「芸術とは何か」という根本的な問題をはじめ、人間の創造活動によって生みだされた視覚的なもの=造形芸術(美術)に関することがらを研究対象としています。

    わたしたちはそのような「美術史」を、作家論と作品論を主軸として、複数の学問分野や領域を視野に入れた幅広い知見をもって、様々なアプローチから体系的かつ歴史的に探求しています。

    主に西洋古代美術史・西洋近世美術史・近代美術史・日本美術史の4分野に分かれており、各専門分野のなかで自らの専門性を高めています。


    芸術支援
    芸術支援領域は、人間の感性を豊かにし、社会にうるおいを与える芸術のちからを支えるための環境形成・支援・応用に取り組む「芸術による社会貢献者」の育成を目指して、平成19年度博士前期課程発足とともに設置された新しい領域である。
    専門科目としては、「芸術支援学」「美術論」など美術館や美術に関わる理論、「美術教育内容論」「芸術教育方法史」「芸術文化政策」など芸術教育や文化政策に関わる理論等の習得とともに、筑波大学所蔵美術コレクション等を活用した展示企画に関わる授業(「芸術支援学演習」)や美術鑑賞支援活動の実際に関わる授業(「芸術学習支援論」)等を受講することができる。
    これらの特色あるカリキュラムの履修を通して、芸術と社会生活との関わりを考え、理論と実践の両面からの課題に取り組み、その基礎の上に、各自の研究課題を通して、新しい芸術支援のあり方を探求することを目指していく。


    洋画
    私たちは、制作を繰り返しながら、自らの課題について独自の表現内容と方法を模索してきました。
    授業や日々の生活の中で感じたこと、見ているもの、表現したいと思うものは各個人で様々です。
    制作するたびに湧き起こる描く内容に対しての問いや描くという行為に対しての問いに対し、常に明快な答えが出せるわけではありません。
    しかしながら、それぞれが持つ問いに真摯に向きあい、制作につなげることがその答えに近づく道だと考えています。
    2年という期間は何かを成すにはとても短く、修了制作とはいえ皆が発展途上の中におります。
    まだまだ未熟ではございますが、ご高覧、ご批評の程、よろしくお願い申し上げます。


    日本画
    日本画には、先人たちが築き上げてきた長い歴史があり
    その素材や技術などは日々進化をしています。
    しかし、現在でも「描く」ということの根源に変わりはありません。

    この度修了を迎えた私たちは、日本画を「描く」ということ、
    そして同時に素材や技法を学び、
    そこから各々の新たな表現の可能性を追求してきました。

    日々の研究の成果をご高覧頂ければ幸いです。


    彫塑
    土も石も木も金属も
    わたしたちの扱う素材は
    遥か昔からこの地球上に存在していたものです。

    土をこねる
    石を割る
    木を削る
    金属を叩く

    人類が誕生してからずっと繰り返されてきた、一見原始的ともいえるこの活動が彫刻を生みだし、現代において自分たちもそれと変わらぬ活動をしています。
    そこに必然性を感じるのは、こうした行為が人の本能であるからではないでしょうか。

    5人それぞれが、それぞれの素材を選択し
    これにかたちをあたえるべく対峙した時間と行為の蓄積です。
    その成果をご覧ください。



    突然ですが、「書」とは何だと思いますか?

    文字を綺麗に書くこと?
    パフォーマンス?

    捉え方はひと様々ですが、少なくとも私たちは「書」を芸術と捉えています。また、そんな私たちにとって「書」とは何かを振り返ってみると・・・

    生き甲斐?
    文字を使った自己表現?
    ただの暇つぶし?
    研究や古人と対話するための材料?
    それとも、ふりかけのごとく人生に彩りを持たせるスパイス?
    はたまた、二層夾宣のように人を熱く厚くするもの?

    でも、それは未だに靄に包まれたままです。ただ、気が付くと筆を持って文字を書いて、石を彫っている・・・「書」が何であれ自分たちにとってかけがえのない存在になりつつあるのは事実。
    だからこそ、その「書」とは何かを追い求めてこれからも走っていきます。それぞれの雙峰下ライフを糧にして・・・。


    総合造形
    「総合造形とは何を学ぶコースですか?」

    しばしば、私たちはこの様な質問に直面します。
    「現代美術を学んでいます。」と答えるのは簡単ですが
    それでは、次に現代美術とは何かを説明しなくてはいけなくなります。
    それは、非常に難しいことです。現代美術を学んでいる、と言っても
    「現代美術とは何か?」を学んでいるわけではないのです。

    世の中には様々なインプットがあります。
    それは、生活環境だったり、出会う人々であったり
    様々な事象であったりします。それらを美術のモチーフとして
    何を選択するかは人それぞれで違います。
    そして、それらモチーフをどんなカタチで表現していくか
    様々なアウトプットを考え出します。
    それは、立体作品であったり、平面作品であったり
    映像であったり、身体表現であったり
    こちらも何を選択するか、人それぞれです。
    その多様なインプットとアウトプットをいかにして
    結びつけるかを、私たちは日々学び、経験していきます。


    クラフト
    私たちが日々素材と向き合い、自らの手で関わり続けるということは、すなわち自然と向き合い、自然の英知と共に行為しているということでもあります。
    素材そのものを見つめ、関わり合うことを通して、私たちは有史以前から続いているものづくりの本質を見極め、またこの世界の物事の成り立ちを識り、自らの存在意義に気付くのです。
     
    手仕事による作品は、素材を見つめ続けてきたことの痕跡であり、新たな展開の兆しであり、また、つくり手と素材との英知の結晶ともいえるでしょう。
    私たちは陶磁、硝子、木工それぞれの視点から素材の可能性を再認識し、制作研究を通して新たな表現の展開をカタチにし続けていきます。


    構成
    私たちがものを作る時、形・色・材料・テクスチュア・光・運動などの「造形要素」と、バランスやリズム感などの「造形秩序」を組み合わせます。時には無意識に行ってしまうかもしれないこの作業を、意識的に分解し、そして再構築し、誰にでも説明できるように、また誰にでも創作できるように研究することが、構成領域の役割だと考えています。もちろん、その研究を生かした作品制作も行い、「理論」と「実践」を両立させることが、筑波大学の構成領域の特徴でもあります。

    私たちは博士前期課程での2年間で、平面構成、立体構成、色彩構成、運動造形、CG制作など、数多くの表現特性を学びつつ、造形の基本的な要素を見つめ直しました。最終的に各々が何に興味を持ち、それを掘り下げ、そしてどのような発想により秩序立てて作品を制作したのか、その研究過程も含めてご高覧いただければ幸いです。


    ビジュアルデザイン
    ビジュアルデザイン領域が追究するのは、視覚的・造形的手段により内容を美的・効果的に伝えるための媒体に関わるデザインです。すなわち、イラストレーション、タイポグラフィ、ダイヤグラム、印刷、写真、映像等を用いて、印刷物・出版物、各種のグラフィックプロダクツ、多様なメディアに展開する広告、環境におけるサインや色彩、またWebサイト等々をデザインする分野です。研究の内容は多岐にわたり、製品プロモーション、ブランディング、編集デザイン、ブックデザインといった総合的なデザイン、また、絵本・マンガの制作や研究等も含まれます。
    より美しく、より効果的に、より円滑に伝えるデザインとは何か。
    展示されている作品は、そのような問いに対する私たちなりの回答であり、研究の成果です。
    ご高覧いただければ幸いです。


    情報デザイン
    情報デザインとは、情報を伝達する様々なメディアや機器、その伝達システムを対象としたデザイン領域です。情報伝達のメディアには、新聞・雑誌・放送などのマスメディア、案内誘導や情報提示のインフォメーションシステム、電話等の通信機器、コンピュータ等の電子機器、インターネットのWebサイト、ゲームやデジタルコンテンツ、様々な情報を総合的に提示する展示施設など、実に様々です。それらの設計やデザイン、また様々な機器や装置とそれらのインターフェースや操作パネル等も情報デザインの対象です。日常生活で行なわれる情報とのコミュニケーションでは、子供からお年寄りまで分かりやすく使いやすいデザインが求められます。情報デザイン領域ではアクセシビリティ(近づきやすさ)やユーザビリティ(使いやすさ)などを学びながら分かりやすいコミュニケーションのデザインを研究しています。


    プロダクトデザイン
    プロダクトデザイン領域は、人が造りだす道具や機器、設備等の「モノ」およびモノと人・生活との「関わりのありかた」をデザインする領域である。
    人間は言語を操る動物であると言われるが、同時に道具を操る動物でもある。
    ゼムクリップからスペースステーションまで、自動車等の輸送機器、生活機器、産業機器、情報機器、家具、レジャー機器、環境設備機器等私たちの周囲に存在するあらゆるモノが、プロダクトデザインの対象となる。


    環境デザイン
    環境デザイン領域では、都市や農村、自然と人間が相互に良好な関係を持ちながら、快適で持続可能な社会環境を創出する考え方を幅広い視点から学んでいます。

    私たちが生活している「場」は、スケールの違いはあれ、すべて「環境」といえるものです。インテリアにはじまり、街路、公園、都市、地域といったあらゆるスケールの「空間」が対象です。そして、それらを総合的・有機的に扱うことによって、人間がより快適に生活できる空間の創造を目指しています。強いて言えば、環境をデザインするのではなく、「環境とデザイン」する方法を模索、提案しています。

    本年度は、都市における遊休農地、公営住宅の転用、住宅地の街路景観、屋外広告物を対象とし、研究を行いました。今日の私たちの生活を考えるきっかけになれば幸いです。


    建築デザイン
    建築デザイン領域は、建築に関する設計、計画、構想を学んでいる。表層的なデザイン力ではなく、その中で起こるプログラム、人々の行為、周辺環境、地域性など、私たちの暮らしを取り巻くあらゆる要素を総合的に考えて、空間をデザインする力を身につけるため、日々の課題に取り組んできた。卒業制作は、社会に対して新しい価値を提案すべく、頭を振り絞り、睡魔に打ち勝ち、魂をこめて仕上げた4年間の集大成だ。渾身の作品をお楽しみいただきたい。