書領域で開講している授業の一部と、その他の活動をご紹介します。
芸術専門学群書領域
書基礎演習I-1・I-2・I-3
楷書・行書・仮名の名跡を臨書し、実作における基礎的能力の育成を目指します。各古典の筆法や結構法をただ学ぶだけではなく、教員の添削を通じて、自らが善し悪しを判断し改善することのできる能力を身につけます。また、作品制作への応用も視野に入れ、章法(作品構成)も重点的に学びます。
書鑑賞論A・B・C
Aでは、中国書法史に関わる中国語文献の講読を行います。専門的な知識を養うとともに、中国語の長文を読む力を身に付け、将来の論文執筆への布石とします。2022年度は、書の普及に大きな役割を果たした中国の法帖に関する文献を扱い、理解を深めました。
Bでは、文房四宝をはじめとする書の文物を取り上げ、一部、実際の遺品を扱いながら、製法や様式の変化を探ります。表具の形式など、鑑賞の際に必要となる基本的な知識についても学びます。
Cでは、中国書法史に関わる漢文文献の講読を行います。名跡に付された題跋(奥書)などを実際に読むことで、昔の人々の書に対する考え方の一端を探ります。
日本書道史A・B・C
日本の書の歴史を通観します。折にふれて歴史資料を用い、その扱い方も学びながら、時代背景、周辺の文化の状況についても併せて学習します。複製の鑑賞も行い、その全体像、現在の伝存状況についての理解を深めます。また、講義を通して、先行研究の紹介も適宜行われ、現在までの研究活動がどのように進んでいるのかを知ることもでき、個人の調査、研究へと発展させることが可能となっています。巻子等の扱い方、写経の書式についても学びます。
書仮名演習A-1・A-2・B-1・B-2
平安時代の名筆、とりわけ、仮名の美しさの典型を示す古筆について学習します。高野切・寸松庵色紙・継色紙などの古筆を用い、来歴や特徴、基本的な技法を学びます。授業では、実際に古筆の複製を鑑賞したり、同じ筆者による古筆の確認、また、料紙の倣製を行います。これらの過程を通して、平安時代の古筆に対する教養を深め、鑑賞力を養っていきます。実技では、前に挙げた古筆を中心に原寸臨書と拡大臨書を行います。最終的には、古筆の現存部分をもとに倣書(まねて書くこと)し、散佚箇所の復元にも努めます。
書仮名演習C-1・C-2
学習した内容をもとに、卒業制作を行います。以前の授業で扱った高野切・寸松庵色紙・継色紙はもちろん、授業で扱っていない古筆にも挑戦することができます。臨書や倣書、また散佚部分の復元を施したり、また、表具を書写当時の原装に再現したりなど、それまでに培った知識を発揮することができます。個々の必要に応じて、古筆の来歴・現存状況などの調査や、料紙の探索、字典の作成を行います。
学外演習A-1・A-2・B-1・B-2
国内の美術館・博物館に所蔵される書跡を実見することで、書についての理解を更に深めます。学芸員・研究員の方に解説をいただいたり、書の遺品を特別に見せていただくこともあり、研究・実作両面において大変有益なものとなっています。演習前後に、他の関連施設や店舗を自主的に巡ることもできます。
卒業研究A・B
書領域では、論文・制作の両方を卒業の要件としています。
卒業論文は、4年間の学習の成果として、中国書法史・日本書道史・文字学・制作論・書写書道教育法等について研究し、論文としてまとめるものです。授業や自主的な調べ物を通して、興味を感じたことをテーマに据え、先行研究の検討をしたり、新たな知見を提示したりします。3年の途中から指導教員を定め、助言をもらいながら進めていきます。
卒業制作では、漢字・仮名・篆刻の中から臨書または模刻を2点、その他に創作を1点、合計3点が課せられます。漢字・仮名・篆刻どれかひとつだけに偏ることなく制作を課することによって、多様な視点から実技・書学を考える力を養うことができます。学習の成果より、古筆の復元が行われ、現存しない古筆の原型を想起することができる作品も出されます。卒業制作展で使用されるつくば美術館の展示室は高さが5.2メートルあり、大きな作品を展示することが可能です。
なお、この卒業制作展は、芸術専門学群全ての領域が出品し、そのうち優秀な作品には筑波大学芸術賞(2点)・芸術専門学群長賞(若干数)が与えられます。
博士前期課程書領域
漢字制作A・B
金文や楚文字の臨書・創作を中心とする授業です。作品制作にあたっては、中国の古文字への理解が不可欠であるため、文献の講読を通じて各文字の字義やその起源への理解を深めた上で、制作に入ります。時に、中国の近現代の文字学に関わる文献にも目を通しますので、中国語を必修とします。
仮名制作A・B
仮名の臨書・創作を中心とする授業です。作品制作にあたっては、主に学群で扱っていない古筆を選択し、国文学・書誌学の知見も踏まえ、散佚箇所の復元などを行い、理解を深めます。あわせて、料紙の倣製なども行うことがあります。
博士後期課程書領域
博士後期課程の授業には、特別演習が設けられ、自己の課題に即した研究発表が行われます。
その他の活動
展覧会出品
各種公募展への出品を重ねて受賞する学生や、個展・グループ展で発表を行う学生もいます。
留学・国際交流
提携校をはじめとして海外の大学に留学することができ、現地での学習・研究を通じて研鑽を深めることができます。
留学に関する各種支援制度があります。