第4回芸術支援研究会を開催しました

第4回芸術支援研究会
日時:2013年2月19日(火)18:00~20:00
場所:筑波大学芸術学系棟1階ギャラリー共通資料作業室B121
報告:(以下、発表者本人による報告)

発表1
発表者:寺門陽平(筑波大学大学院人間総合科学研究科博士前期課程芸術専攻芸術支援領域2年) 
発表題目:アーティスト・ランで運営されるオルタナティヴ・スペースの可能性 ー水戸のキワマリ荘の事例を通してー
報告:
私は、自身が茨城県水戸市で運営に加わっている、「水戸のキワマリ荘」という名のアートスペースでの実践事例を通して修士論文を執筆致しました。
オルタナティヴ・スペースは現在の日本のアートシーンにおいて、美術館やギャラリーだけではなく、広く既存の社会制度に代替•対抗する流動的な性質をもつ場として訳されることが妥当であり、誕生当初に比べ多様な活動の展開がなされています。
その中でも、アーティスト・ランで運営されるオルタナティヴ・スペースは、芸術を中心軸に活動を行い、設置された地域において場を開き「アートに興味がある人」に限定されないよう、地域住民との距離感が近い場づくりを行っています。
水戸のキワマリ荘にも同様の特徴がありますが、公共施設や任意集団、イベント・企画など、場と場を繋ぐような活動がなされていることは特徴的であります。
本論では水戸のキワマリ荘で行った3つの活動事例「キワマリ荘の写真部」「踊り子軍団山猫」「キワマリ荘ガレージセール」を取り上げ考察を行い、アーティスト・ランで運営されるオルタナティヴ・スペースには、地域社会と芸術をとりもつ文化発信の拠点としての機能があると論じました。

水戸のキワマリ荘

水戸のキワマリ荘

発表2
発表者:輿水愛子(筑波大学大学院人間総合科学研究科博士前期課程芸術専攻芸術支援領域)
発表題目:高等学校美術科教師による授業の構想と実践
報告:
学校教育における科目としての美術は教師個人の意識や価値観、知識などが授業内容に反映される度合いの大きい分野といえます。
しかし、これまで美術科教師という存在そのものに焦点を当てた研究は多くはなされてはおらず、高等学校における美術科教育について包括的に検討された研究事例も希少な実態があります。
しかし、私は日々の授業を行う美術科教師の視点からこそ、浮き彫りにする事が可能な美術科教育の様相があると考えます。
そこで修士研究では、優れた取り組みを行う公立高等学校の美術科教師5名を調査対象者として授業実践の観察を行うとともに、対象授業の構想と実践に関わる意図や経験についてインタビューを通して問うことで、個々の教師が日々の授業においてどのような意図や体験をもとにそれぞれの授業を構想し、実践に反映させているのかを考察しました。
考察では、各々の教師固有の性質や特色、教師を取り巻くひと・こととの多様な関わりの中で授業が構想・実践されていること、また教育活動を行う中で想起・発見される課題や問題について、個々の教師が日々の授業や関連する取り組みを通して如何に解決の糸口を見いだしているのかが明らかとなりました。
5名の教師の事例が示す創造的な授業のあり方は、今後、高等学校における美術科教師の実践や教師に由来する意識や経験などを明らかにする上での基礎的な知識として共有できると考え、研究会でも報告させていただきました。

「地球コレクション」の生徒作品

「地球コレクション」の生徒作品

第4回芸術支援研究会の予告
日時:2013年4月16日(火)18:00~20:00
場所:筑波大学芸術学系棟1階ギャラリー共通資料作業室B121
内容等、決定次第告知します。

第2回・第3回芸術支援研究会を開催しました

第2回芸術支援研究会
日時:2012年12月25日(火)18:00〜20:00
場所:筑波大学芸術学系棟1階ギャラリー共通資料作業室B121

報告:
 第2回目の芸術支援研究会では、はじめに研究会のあらましについて発起人の市川寛也(博士後期課程2年/芸術支援領域)より説明を行いました。この研究会では、多岐にわたる芸術支援の研究対象や研究方法について議論を深め、芸術支援「学」としての体系化を図っていくことを目指していきます。当面は、芸術支援に関心のある皆さんの研究発表の場として開催していく予定です。
 今回は、角野嵩宜さん(博士前期課程2年/クラフト領域)に、ご自身の陶による制作活動や東日本大震災以降の「アートによる支援活動」についてご発表いただきました。
(文責:市川)

第3回芸術支援研究会
日時:2013年1月15日(火)18:00~20:00
場所:筑波大学芸術学系棟1階ギャラリー共通資料作業室B121
報告:(以下、発表者本人による報告)

発表1
発表者:鳥山裕加(筑波大学大学院人間総合科学研究科博士前期課程芸術専攻芸術支援領域2年) 
発表題目:アートマップ制作による地域アートの発掘―「大森アートマップ」制作を事例として―

 本論は「大森アートマップ」の制作を通じ、制作参加者である住民の「地域アート」に対する意識を明らかにすることを目的とする。そして、アートマップ制作と「大森アートマップ」そのものが制作メンバーと「大森アートまちあるき」参加者の意識にどのような影響を与えたのかを検証し、今後の「地域アート」の鑑賞支援に役立てられるよう、「大森アートマップ」の効果と課題を明らかにしていく。
 「大森アートマップ」制作過程でのフィールドワーク調査やインタビュー調査、アンケート調査を基に、制作メンバーと「大森アートまちあるき」参加者の「地域アート」に対する意識や関心の分析をした。
 以上の分析結果から、制作メンバーは常にまちづくりを意識し、自分自身の意識を変化させる〈視点の転換〉を行うことで、まちなかの既存の地域資源に新たな価値付けしており、住民の生活文化そのものを「地域アート」と捉えていた。また、「大森アートマップ」は「大森アートまちあるき」の参加者に対しても既存の地域資源や地域芸術文化について考えるきっかけを与えた。よって、アートマップの制作と完成した「大森アートマップ」は、制作メンバーと「大森アートまちあるき」参加者の双方に〈視点の転換〉を促し、さらには、大森における「地域アート」の新たな見方を生み出し、結果「地域価値再構築の効果」をもたらすことができた。また、特に、個人宅前のオブジェ等の「非公共性・非永続性・非開放性」の地域資源が双方に「地域アート」の意義についての疑問を投げかけ、受容されていくことが明らかとなった。マップ本来の機能を保ちつつ、「非公共性・非永続性・非開放性」と「公共性・永続性・開放性」のバランスを考慮し、まちの変化にその都度対応しながら情報の更新と蓄積を継続的に行っていくことが今後の制作の課題と考える。

大森アートマップ(表)

大森アートマップ(表)


大森アートマップ(裏)

大森アートマップ(裏)

発表2
発表者:箕輪佳奈恵(筑波大学大学院修士課程教育研究科教科教育専攻芸術科教育コース2年)
発表題目:開発途上国における美術教育実践

 私は、自身が開発途上国(モルディブ共和国)の小学校で一教師として美術教育に携わった経験を基にして、修士論文を執筆した。途上国の教育開発および教育開発研究から、従来「抜け落ちて」いた部分でもあった美術教育の分野において、自らの経験を活かしながらそのリアルな実態に迫る、という試みをしている。
 「美術」には、世界共通の統一された概念はない。私たち日本人が「美術」「アート」であると信じて疑わないものであっても、それが地球上全ての国・地域・文化圏においても通用するとは限らない。研究では、そのような美術に対する多様な価値観を尊重しながらも、学校教育としての美術教育をどのように改善していけばよいのか―しかも「異文化者」という立場で―、について考察をしている。何を美術としてとらえ、どう教えてゆくのか。この、いわば普遍的な「命題」に対して、各々が考えを巡らす契機となっていれば幸いである。
箕輪プレゼン画像

芸術教育学に関する博士論文の一覧を更新しました

筑波大学大学院において学位授与された、芸術教育学に関する博士論文の一覧を更新しました。
2012年3月までに学位授与された3点を新たに追加しています。
以下のサイトから、「芸術教育学 博士論文一覧 」をご覧ください。
https://www.geijutsu.tsukuba.ac.jp/~naoe/

芸術支援コース卒業論文概要を公開

芸術専門学群 芸術学専攻 芸術支援コースでは、平成23年度の卒業論文の概要をウェブ上に公開しました。
過去の卒業論文概要はすべて、以下のページで見ることができます。
https://www.geijutsu.tsukuba.ac.jp/aes/卒業論文

平成23年度修士論文概要をウェブ公開しました

筑波大学大学院 博士前期課程 芸術専攻 芸術支援領域では、平成23年度の修士論文の概要をウェブ上に公開しました。
過去の修士論文の概要はすべて、以下のページで見ることができます。
https://www.geijutsu.tsukuba.ac.jp/aes/修士論文