博士後期課程 徐英杰さん、髙橋慧さんが『美術教育学』賞奨励賞を受賞しました
博士後期課程芸術専攻3年の徐英杰さん、同1年の髙橋慧さんが、美術科教育学会から『美術教育学』賞奨励賞を授与され、2016年3月19日、美術科教育学会第38回大阪大会において表彰されました(学年は受賞時)。
同賞は、美術科教育学会誌『美術教育学』に掲載された論文のうち、執筆時45歳以下の著者による「美術教育実践に寄与する意欲的な実践的研究」または「美術教育学研究に寄与する清新な理論的研究」に対して授与されるものです。
以下、「第13 回『美術教育学』賞選考報告」より抜粋
『美術教育学』賞奨励賞
■ 徐 英杰(じょ えいけつ)
「中華人民共和国における美術教員養成課程のカリキュラム ─ 1980 年代を中心に─」
選考理由:中国の美術教育を対象にした論文は過去に少なくないが,本論文は,その扱う対象・時代がこれまでのものにはなく,また,資料を分析する方法や背景となる歴史認識が明確で読者を手際よく史的課題に導いている。本論文が扱う「文化革命の混乱期から改革開放政策の開始の時期の中国の美術教育の変化」には,日本が明治当初に経験した多くの課題と通底する史的展開が見られる。本論文は,教員養成カリキュラムを通じて,よくその史的課題を追い,誠実な探求を見せている。このように,本論文は,文化的架橋の基礎となる論文として高く評価できる。今後,徐氏には,このような歴史的な内容にかかわって今日の日本美術教育のありように言及する研究が期待される。
■ 髙橋 慧(たかはし けい)
「乳幼児期からの複数領域を結び付ける表現活動の可能性と感覚間協応に基づく理論的説明」
選考理由:本論が示す「子どもの発展的特性から見た感覚的協応」「人の芸術活動と感覚的協応との関連性」「今日の保育・表現遊びにおける感覚的協応」の3点は,美術教育の原初的な場面を探求する重要な考察である。本論文は,「現在の美術教育学上の重要な課題とは何か」という根本的な問題意識において,それが示す,造形・音楽・身体・言語領域を結びつける活動を保育実践に導入する妥当性と理論的根拠を探求する姿勢が高く評価できる。今後,髙橋氏には,このような美術教育の根本問題にかかわって,さらに論究の拡がりと深みを増した研究が期待される。