第2回・第3回芸術支援研究会を開催しました
第2回芸術支援研究会
日時:2012年12月25日(火)18:00〜20:00
場所:筑波大学芸術学系棟1階ギャラリー共通資料作業室B121
報告:
第2回目の芸術支援研究会では、はじめに研究会のあらましについて発起人の市川寛也(博士後期課程2年/芸術支援領域)より説明を行いました。この研究会では、多岐にわたる芸術支援の研究対象や研究方法について議論を深め、芸術支援「学」としての体系化を図っていくことを目指していきます。当面は、芸術支援に関心のある皆さんの研究発表の場として開催していく予定です。
今回は、角野嵩宜さん(博士前期課程2年/クラフト領域)に、ご自身の陶による制作活動や東日本大震災以降の「アートによる支援活動」についてご発表いただきました。
(文責:市川)
第3回芸術支援研究会
日時:2013年1月15日(火)18:00~20:00
場所:筑波大学芸術学系棟1階ギャラリー共通資料作業室B121
報告:(以下、発表者本人による報告)
発表1
発表者:鳥山裕加(筑波大学大学院人間総合科学研究科博士前期課程芸術専攻芸術支援領域2年)
発表題目:アートマップ制作による地域アートの発掘―「大森アートマップ」制作を事例として―
本論は「大森アートマップ」の制作を通じ、制作参加者である住民の「地域アート」に対する意識を明らかにすることを目的とする。そして、アートマップ制作と「大森アートマップ」そのものが制作メンバーと「大森アートまちあるき」参加者の意識にどのような影響を与えたのかを検証し、今後の「地域アート」の鑑賞支援に役立てられるよう、「大森アートマップ」の効果と課題を明らかにしていく。
「大森アートマップ」制作過程でのフィールドワーク調査やインタビュー調査、アンケート調査を基に、制作メンバーと「大森アートまちあるき」参加者の「地域アート」に対する意識や関心の分析をした。
以上の分析結果から、制作メンバーは常にまちづくりを意識し、自分自身の意識を変化させる〈視点の転換〉を行うことで、まちなかの既存の地域資源に新たな価値付けしており、住民の生活文化そのものを「地域アート」と捉えていた。また、「大森アートマップ」は「大森アートまちあるき」の参加者に対しても既存の地域資源や地域芸術文化について考えるきっかけを与えた。よって、アートマップの制作と完成した「大森アートマップ」は、制作メンバーと「大森アートまちあるき」参加者の双方に〈視点の転換〉を促し、さらには、大森における「地域アート」の新たな見方を生み出し、結果「地域価値再構築の効果」をもたらすことができた。また、特に、個人宅前のオブジェ等の「非公共性・非永続性・非開放性」の地域資源が双方に「地域アート」の意義についての疑問を投げかけ、受容されていくことが明らかとなった。マップ本来の機能を保ちつつ、「非公共性・非永続性・非開放性」と「公共性・永続性・開放性」のバランスを考慮し、まちの変化にその都度対応しながら情報の更新と蓄積を継続的に行っていくことが今後の制作の課題と考える。
発表2
発表者:箕輪佳奈恵(筑波大学大学院修士課程教育研究科教科教育専攻芸術科教育コース2年)
発表題目:開発途上国における美術教育実践
私は、自身が開発途上国(モルディブ共和国)の小学校で一教師として美術教育に携わった経験を基にして、修士論文を執筆した。途上国の教育開発および教育開発研究から、従来「抜け落ちて」いた部分でもあった美術教育の分野において、自らの経験を活かしながらそのリアルな実態に迫る、という試みをしている。
「美術」には、世界共通の統一された概念はない。私たち日本人が「美術」「アート」であると信じて疑わないものであっても、それが地球上全ての国・地域・文化圏においても通用するとは限らない。研究では、そのような美術に対する多様な価値観を尊重しながらも、学校教育としての美術教育をどのように改善していけばよいのか―しかも「異文化者」という立場で―、について考察をしている。何を美術としてとらえ、どう教えてゆくのか。この、いわば普遍的な「命題」に対して、各々が考えを巡らす契機となっていれば幸いである。