「POTA」 貝塚珠季 2011年5月9日~2011年5月13日

展覧会「POTA」が開催されます。
会場:アートギャラリーT+
会期:2011年5月9日~2011年5月13日
出展者:貝塚珠季(芸術専門学群デザイン専攻3年)

家具を溶かしました。

T+review

まだ五月だというのに昨年の夏の暑さを予感させるような気候がムワリと身体に纏わりつくような日。度の合わない眼鏡と溶け出した家具。人を気だるい気持ちにさせるには最高の組み合わせだ。
ぼやけた風景の中で、わたしの目前にある赤い時計と赤い椅子は、溶けていたのだ。本当に。夢じゃなくて。妄想じゃなくって。
「混乱」の一言では片付けられない人智の及ばぬ出来事が次々に起きて、日々ふつうと思ってきた何もかもが、ジェンガが崩れる時みたいに呆気無く壊される。アッと呟いて立ち尽くす間に、むしろ事後の目前の物事のほうが本物のふつうなのでは?なんて観念して錯覚してしまうくらい鮮やかに。私たちの生きる地球上では、願ってもいないのに、そういうことが時々起こる。今日の光景も、きっとその種の事変に違いない。
モンドリアンのコンポジションのような色合いをしたテレビや鉢植えやテーブルやその上の灰皿もしゅわしゅわと溶け出していた。溶け出す世界を見つめながら、人は何を思うのだろう。溶けちゃったから新しいのを買っちゃおうとか。誰かに要らなくなったものをもらおうかなとか。でも、悪くないかも?これが日常でも。やっぱり無理かも!毎日この調度品に囲まれて生活するのは。とか。
そうやって私たちは毎日多かれ少なかれ、小さな選択をして生きている。小さな選択が紡がれて生活は繰り広げられ、世界は作られているのかもしれない。だから、ある部分に支障があると、続く部分もすべて途絶えてしまう。そういうことが急に起きた時のために、普段から、様々な状況やストーリーを想像して、イザというときのために備えておくのは大事なことかもしれない。想像され得る変動の一つを、彼女は忠実に再現してくれたのだ。(辻真理子)

POTA