「能動的に静止する」フジシマサッコ 2016年7月25日~7月29日

「能動的に静止する」が開催されます。
会場:アートギャラリーT+
会期:2016年7月25日(月)~7月29日(金) 9:00 – 18:30 
出展者:フジシマサッコ(人間総合科学研究科芸術専攻 2年)
T+review

 過去も現在も、未来も同じように、時は止まることなく流れ続ける。一度として同じ時間は存在しない。そのような「一瞬」を画面にとどめた作品であった。
 展示されていたのはスクリーンショットをした画像を引き延ばし、大きく印刷したもの。単なる写真ではないところが面白い。インターネットが普及した現代社会の中で、写真を撮ることよりもさらに手軽なものではないか。スクリーンショットを日常的に使用している鑑賞者も多いだろう。そのような何気ない日常の一動作を制作の手法に用いた作者の発想は独特であった。しかしながら、それは作者が描いたものではない。すでにあるものを私たちに提示するという一種の行為である。レディ・メイドの作家として知られるデュシャンの≪泉≫を彷彿とさせ、鑑賞者に芸術の表現の多様性を感じさせたことだろう。
 作品とキャプションに二項対立が生じていた。作品にはその緯度が題名として付けられていた。土地はその上に工場が建とうと、家が建とうと、持ち主が変わろうと、見え方が変わるだけでその土地は「土地」として機能し続けるものであり、永久に変わらない。しかし作品の方はどうだろうか。何かを作品にして残すということは、一瞬を画面に閉じ込めるということだ。この作品を見ると、「そのとき」が記録されているだけで、「現在」は全く違う景色になっているという可能性も否定できない。永遠と刹那という関係性が作品と題名との間に生まれている。
 展示全体としては、挨拶文が鑑賞者にとって分かりやすく、作品に入っていきやすい、導入となっており、鑑賞する際の足掛かりとなっていた。また、その挨拶文で、あえて「散策」という言葉を使っていた作者の意図を考えながら見ることができた。
私たちが過ごしている「今」が「過去」になっていくということを感じさせた展示であった。(高田和音)

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