14×27cm 帖装 2008年

よをさむみ ころもかりがね なくなべに
はぎのしたばも いろづきにけり

すがねのあそん
秋かせに こゑをほにあげて くるふねは
あまのとわたる かりにぞありける

みつね
うきことを おもひつらねて かりがねの
なきこそわたれ あきのよなゝゝ

森岡隆先生のご指導のもと、修士在学中に「寸松庵色紙」(元は粘葉装)の現存箇所を臨書し、あわせて散逸した片方の頁を復元しました。手製の字典をもとにしましたが、現存字例が1363字と比較的少ないこともあり、連綿の処理に苦労しました。

展示箇所は、『古今和歌集』巻四、211~213番歌の3首を書いた部分です。現存する212番歌の料紙中央に切断痕が見られること、また、211・213番歌の当該古筆の模写と見られるものが残されていることから、見開きに3首書いた箇所があったとする説に則りました。ただ、時間がたち冷静に見ると、紙面の収め方をもう少し工夫する必要があったと思っています。