【授業紹介】デザイン総合演習『まちかどラボラト・ラリー』
昨今、地方の中心市街地の衰退が問題となっていますが、稲敷市の中心である江戸崎商店街もまさにその典型的な例であり、大型商業施設との価格競争では後塵を拝し、後継者がいない商店も多く、商店主も行政も商店街の未来を描けていないという状況がありました。
しかし、幸いにも江戸崎には他所の人(今回は私たち筑波大の学生)を受け入れてくれる土壌があり、これからの江戸崎商店街の探るための社会実験をさせていただくことができました。
まずは第三者としての客観的視点をもちながら、4つのグループごとに江戸崎商店街をリサーチすることからはじまりました。
そこから見えてきた様々な手がかりは、私たちが発見した江戸崎の魅力を街の人々に伝え、また新たなアイデアを引き出せるような、まちづくりのイベント『まちラボ』へと繋がっていきます。
具体的には、まちかどに点在する4つのラボラトリー(実験室)をスタンプラリー形式で街の人々と巡っていきます。
まずは、江戸崎商店街に残る言い伝えや昔の記憶を街の人々に話して頂き、私たちだけでは知ることのできない、街の歴史やディティールを明らかにしながら、江戸崎の新たなキャラクターづくりをしていこうという『江戸崎の記憶を記録するためのおしゃべり会』を行いました。
最初はお互い探り探りの状況でしたが、気づけば様々な話が人々から飛び出し、ワークショップは大盛況のうちに終わります。
続いては江戸崎の商店に眠っていた『いえ印』を復活させ、江戸崎商店街のあらたな風景や風景にしていこうという『江戸崎いえ印探検隊』に移っていきます。いえ印というものは、それぞれの家の特徴を簡潔に表すことのできる大変優れたデザインで、今回の試みは伝統を復活させるということだけに留まらず、文字や看板が乱立する現代の商店街に対し、新たな商店街の風景を提示している気がしました。これに伴って配布された『いえ印手ぬぐい』のデザインは江戸崎の人々大変好評でした。
次は『シャッターラボ−江戸崎今昔物語−』へ移っていきます。これは江戸崎の商店街において、シャッターを閉めている店舗が点在しているという現状を受け入れつつ生かせないかという試みで、実際にシャッターに商店街の古い貴重な写真を貼り、さらにこの写真を踏まえて現状の様子を写真に収めにいくということで、過去と現在を繋ぐような役割を果たしてくれました。
そしてこれらのまちラボを統括・運営していたのが『おもてなしキャラバン』です。今回は八百伝さんの店先をお借りして、ワークショップ会場にしたり、やってきた人々をお茶や焼き餅でおもてなしする役割を担いました。『おもてなしキャラバン』を実現するにあたり、自然と店先を整える必要があり、今回は窓拭きや看板掃除もやらせていただきました。これがキャラバンのように続いていったら商店街の美化に繋がるかもしれません。また、店先に七輪を置いているだけで、何しているの?と興味をもってくれる人々が多くいました。きっかけは些細なことなのかもしれません。
このまちラボに合わせて江戸崎まち模型も制作しました。普段住んでいる街が客観視できるとあって住民たちは興味津々で、自分の家を見つけると大変喜んでいました。この模型はもう少し修正をして市役所に寄贈します。まちラボで示した私たちのアイデアとともに江戸崎のまちづくりのきっかけとなっていってくれればと願います。
[デザイン専攻4年 T.S]

江戸崎商店街をリサーチ

江戸崎の記憶を記録するためのおしゃべり会の様子

『いえ印』の復活。商店街を彩ります

ワークショップ会場の『八百伝』さんの店先でおもてなし

江戸崎まち模型を囲んでのミーティング