「未定」 小嶋芳維、原口寛子、渡部浩太、呉尚殷、塩満俊彦、田中みさよ 2012年8月6日~2012年8月10日

展覧会「未定」が開催されます。
会場:アートギャラリーT+
会期:2012年7月30日~2012年8月3日
出展者:
小嶋芳維
(人間総合研究科芸術専攻総合造形領域博士前期過程2年)
原口寛子、渡部浩太、呉尚殷、塩満俊彦、田中みさよ
(人間総合研究科芸術専攻総合造形領域博士前期過程1年)

一日一人パフォーマンスをします。


「セントラルドグマ」 安酸利倫 2012年7月30日~2012年8月3日

展覧会「セントラルドグマ」が開催されます。
会場:アートギャラリーT+
会期:2012年7月30日~2012年8月3日
出展者:安酸利倫(美術専攻特別カリキュラム版画2年)

絵画(油、版画、etc)


「脈絡」 関川航平 2012年7月23日~7日27日

展覧会「脈絡」が開催されます。
会場:アートギャラリーT+
会期:2012年7月23日~2012年7月27日
出展者:関川航平(美術専攻特別カリキュラム版画4年)

あることないこと


「この柵のむこう」 小嶋 芳維 2012年7月17日~7月20日

展覧会「この柵のむこう」が開催されます。
会場:アートギャラリーT+
会期:2012年7月17日~2012年7月20日
出展者:小嶋芳維(人間総合研究科芸術専攻総合造形領域博士前期課程1年)

立体+ビデオインスタレーションによる展示。

T+review

ギャラリーの床にはコの字型に曲がった柵のようなものがいくつか立てられている。ギャラリーの入り口側の壁にはプロジェクターが設置され、柵を挟んで向かい合う壁に映像を投影している。その映像が、この「柵の向こう」(=壁)と私たちがいる床との関係を変化させていく。シンプルな内観は、壁や床が周りの状況に応じて相対的に変化していく可能性を持っているのだ。
 映像の最初は何も映っていない。突然画面の外からペンキの缶を手に提げた人物が登場し画面の中央で止まってしゃがみ込む。この時点ですでに、鑑賞者は違和感を覚えることだろう。なぜならその映像が、映像中の人物を真上から見下ろしている視点で撮られており、それが垂直な壁に投影されているからである。鑑賞者が立っているところと映像の人物が立っているところ、どちらが地面なのか?そんな不思議な感覚が生まれてくる。
 映像中の人物はペンキの缶に手を突っ込み、画面の中心に円を描き出す。そして、黒いペンキで描かれたその円を同心円状に描き広げていく。筆や刷毛は使わず手でゆっくりと行う作業だ。その作業している様子を眺めていると、ふと、映像中の地面に黒々とした穴を開けているように見えてきた。円の黒は地下へと続く空間のように見え、その中、つまり地面に空いた穴の中に吸い込まれていくような奥行きを感じる。
 そんなことをぼんやり考えている間にも円はどんどん大きくなり、画面に占める黒の割合は大きくなっていく。穴のように見えていた黒い円は存在感を増し、私たちに迫ってくる。そのようすは黒い壁のようで穴のようには感じられなくなってくる。先ほどまで地面に空いた穴のように見えていた黒い円は大きくなったことで壁のようになり、主張を強めているようだ。鑑賞者の立つ床と映像中の床がいつの間にか逆転している。画面からはみ出るほどに円が大きくなっても、映像中の人物は円を描くことを止めない。どんどん画面が黒く覆われていって、ついに映像は黒一色で埋め尽くされる。
 円が描かれ始めてから画面を覆い尽くすまで、約60分。その間、ゆっくりと進む画面内の変化とともに、鑑賞者が立つ床と柵の向こうの画面中の床の関係の変化を感じていた。(岡野恵未子)


「Nature Plan Ⅱ」呉尚殷 2012年7月9日~2012年7月13日

展覧会「Nature Plan – Shan shuiⅡ」が開催されます。
会場:アートギャラリーT+
会期:2012年7月9日~2012年7月13日
出展者:呉尚殷(構成専攻総合造形領域研究生)

 自然界に存在する“微視的世界”(ミクロコスモス)の再創造。 私たちが自らの身体を以てここで視覚的、聴覚的に得る感覚と、元々持っている経験的な自然の中での感覚が知覚の中で交差し、より深い、新しい感覚を喚起する。
 今回の作品は東方山水画をテーマにしている。このコンセプトは前回のものから引き継いでいるが作品が展示空間を生み出す形式であるという点が異なる。素材自体の個性、又は主張が抽象化される過程で素材は物質性から解放される。そしてものとものがシンボルとして関係し合うことにより作品空間の中において相互引力を生み出す。

T+review

蒸し暑い外気から逃れるようにギャラリーの扉をくぐると、中に立ち込めていた冷気が身体を覆い、すうっと身体が冷えて行った。また、ギャラリーのガラスの壁はぐるりと暗幕で覆われ、薄暗い室内の中でスクリーンに映された映像やオブジェなどがピンク色や黄色の光を発している。そしてどこからか、こぽこぽと水がわき出ているような、流れているような音が聞こえている。空気、景色、音、すべてがギャラリーの外と違う環境にされていて不思議な気分になる。
入り口を背にして、ギャラリーを見渡す。窓際にスクリーンが配置され、流動する水のような映像が映し出されている。ピンク色を背景に、より濃いピンク色の液体が上方から垂らし込まれ、じわじわとマーブル上に広がっていく。映像は丸く切り取られた形で映し出され、また、プロジェクターの前には白く丸い物体に沢山の待ち針が刺さったものが置かれ、スクリーンにそれが影となって映っている。流動的な映像に対して、針の山の影は動かない。これらは、山や石、建物などの容易には変化しないものと空や風や川などの、流動していくものとの対比を表しているように感じた。スクリ―ンをはさむように、向かって右には割れたビンのようなものが台の上に置かれ、反対側には釘の山のようなものが置かれている。具体的な形を作っている訳ではないのだが、樹脂で固められたそれらは人の気配や生産という行為の気配が感じられ、ミニチュアの風景のようにも見えた。
その釘の山を見に行こうとして、スクリーンの前を横切る。すると、足元でピチャッという水の跳ねる音がしたので驚いた。足元を見ると、薄く水がひいてあった。録音の水音が流れるなかに突然生の水音が聞こえたことで、足元の感覚、耳の感覚などに鋭敏になる。思わず、一歩一歩に神経を使いながら足元の水を意識して歩いてしまう。
 作者は、「ここでの感覚と、自然の感覚との知覚の中での交錯」を目指すと述べていた。確かに外部と違う世界のようなこのギャラリーの中は、視覚や聴覚、気配や時間など、さまざまな感覚に気付かされたり、敏感になれたりする場所であった。(岡野恵未子)

照片