「開放的マスターベーション」 小山真和 2012年9月24日~2012年9月28日

展覧会「開放的マスターベーション」が開催されます。
会場:アートギャラリーT+
会期:2012年9月24日(月)~2012年9月28日(金)
出展者:小山真和(美術専攻洋画コース3年)

まるで排泄的・自慰的ともいえる私の制作行為。空想に浮かぶ人の気配や期待・願望・祈りを具現化してみる。
制作によって救われればと思うばかり。

T+review


 目、目、目、目、
 あらゆる目がわたしを見下ろしている。何かが欠落したモノたちが、わたしを見下ろしている。この異様ともいえる空間の中で、ただなにひとつ欠落していない自分のこの身体は、異様なほど不自然だった。

 ガラス一面にはりついた虚ろな片目に迎え入れられ、顔のない鮮やかな色彩の身体に頭上から見下ろされていると、何だか妙な気分になってきた。苦しいほどに喉がつっかえ、奥の方からどろりとした何かが溢れ出してきそうになる。わたしたちが生きるこの世界には穢れのない、真に美しいものなど存在しない。誰しも一度は絶望と、救いようのない現実と対面する。一般の美的観点からすると「美しく」ない負の感情は、決して表へ出してはならない、話してはならない、見せてはならない。しかし、それらをいつか開放し自分のなかから吐き出さない限り、永遠に暗い影となってわたしたちのうしろをついてくる。そうして思った。左手の壁の継ぎはぎだらけの男や女のように、現時点で「自分」と呼ぶこの身体は、これまでの「自分」をばらばらに切り離し、その断片を繋ぎ合わせて出来ているのかもしれないと。

 展示者は制作行為自体が排泄的、自慰的行為だと述べている。ならば、そうして吐き出された「モノ」=「作品」を観て、気がつけば幾度も足を運んでいたわたしも恐らく同じ排泄的で、自慰的な行為をしていたのかもしれない。
(太田夏希)

開放的マスターベーション2