「ろうかのゆうれい」 高橋香緒理 2013年9月9日~2013年9月13日

展覧会「ろうかのゆうれい」が開催されます。
会場:アートギャラリーT+
会期:2013年9月9日(月)~2013年9月13日(金)
出展者:高橋香緒理(芸術専攻ビジュアルデザイン領域修士過程1年)

「いると おもえば いる
 いないと おもえば いない」

絵本の展示です。

T+review

一見、絵本の原画展のように見える「ろうかのゆうれい」。しかしこの展示では、“絵本を読む”という行為にごく近い体験をすることができるのだ。
 ギャラリーの中は、絵本のテキストと原画が飛び出して、壁に張り付いてしまったかのようだ。原画は真っ直ぐに並んでいるのではなく、上へ下へとずらして配置され、テキストはその動きに合わせて原画の周りの壁に直接書きつけられている。楽しげにばらばらと配置された原画は、それによってギャラリー全体の空間を使っているかのような効果が生んでいる。ゆえに鑑賞者は絵本の世界に包まれていると感じるだろう。
 しかし、「体験」と先述したのはこれだけが理由ではない。絵本のストーリーはギャラリーの入り口付近の壁から始まって、その対角線上の壁へと進んでいる。絵本の中では、暗闇を怖がる女の子がぬいぐるみと一緒にトイレを目指してそろりそろりと廊下を進んでいく。鑑賞者も、それを読みながらそろりそろりと歩きながら作品を鑑賞する。文字通り、歩きながら絵本を“読み進めて”いるのだ。
 絵本はもともと、“ページをめくる”という身体的な行為があって初めてストーリーが進むものである。今回の展示では、その“ページをめくる”という行為が“歩く”という行為に置きかわり、より動きを持って“読み進める”ことができるものになっていた。まさに、絵本のストーリーを体験できるものだったのだ。(岡野恵未子)

20130909-ろうかのゆうれい