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菅井汲「S. バラ色」

作者生没:1919 武庫郡御影町[神戸](兵庫) – 1996 神戸(兵庫)
制作年:1991年
技法材質:油彩・アクリル、カンヴァス
寸法:73.0 x 49.6 cm
署名:左下に署名「SUGAÏ」;裏面に署名・年記「SUGAÏ/1991」

寺門臨太郎編『筑波大学所蔵石井コレクション Ⅰ. 絵画』、筑波大学芸術学系、2011年、cat. 58。

所蔵番号:2010-JO-IS007

作品解説:

菅井が無類のポルシェ好きであったことは、つとに有名な話だ。1967年で一命を落としかけるほどの大事故に遭ったあとですら、彼は当たり前のように、そのステアリングを握り続けた。スピードと緊張感に憑かれたこの画家が、みずからの集大成として1988年から取り組んだのが「Sシリーズ」である。Sの字をふたつ縦につなげたような形は、画家SUGAÏのイニシャルであると同時に自身を示す「標識」である。模様や色彩をとりどりに変えながら、菅井は繰り返し「S」を描いた。この連作の初期には彩度の高い色が多用されたが、本作品のような、やや淡い彩りは一連の中での発展的段階に当たるとも見なせよう。下から上への動きを方向付ける三つの黄色い矢印と十六分割されたS字形のモティーフからは、ある種の規則性に対する菅井の信頼がうかがえる。