
みなさんは、「環境デザイン」とは何をすることだと思いますか?
「環境をデザイン」することでしょうか?
そのような考え方は、ちょっと単純すぎるかもしれません。
あえて言うなら、「環境とデザイン」する方法を模索することでしょう。
アメリカの造園学者・ランドスケープアーキテクトであるイアン・マクハーグの著書に「Design with Nature」があります。
この「Nature」を「Environment」に置き換えても良いでしょう。
軸足を、建築・都市・造園・土木といったデザインに置きます。
そこに、生態学・心理学・生物学・考古学・地理学・情報学などの方法論を導入します。
そして、「都市・農村・自然」と「人間」の「調和」を目指すのです。
そのためには、既成の概念・領域や方法論にとらわれていてはいけません。
柔軟かつ具体的に改善策を提案していかなければならないのです。
筑波大学の環境デザインでは、幅広い視点から私たちの「環境」をデザインし、研究しています。
人間は環境の「産物」であり、環境も人間の「産物」です。
このような相互依存的な人間と環境の関係を明らかにし、それに応じた環境の「設計」と「計画」について学ぶことを目的としています。
屋内空間(インテリア)、街路、広場、公園、地区(街区)、都市、農山漁村、地域(山野・湖沼・河川などの自然を含みます)といったあらゆるスケールの「空間」を学習対象としています。
そして、それらを総合的・有機的に取り扱うことによって、人間がより快適に生活できる空間の創造を目指しています。
言い換えると、「環境デザイン」は現代における「人間回復」のための、「環境づくり・空間づくり = デザイン」を総合的に学ぶ分野なのです。
私たちの身の廻り、あるいは、私たちが生活している「場」は、スケールの違いはあっても、すべて「環境」です。
しかし、これまでのデザインの実践や学問の考え方は、それを細分化することによって成立してきました。
例えば、インテリアデザイン、建築デザイン、都市デザイン、ランドスケープデザイン・・・といった具合にです。
しかし、現代社会では、科学技術の発展、高度な情報化、産業構造の変動、様々な環境問題などを背景に、急激で大きな変化が生じています。
デザインの分野が細分化されたままでは、複雑で多様な私たちの「生活の場」の全体像を見失う恐れがあります。
今こそ、「環境デザイン」という分野が必要・重要なのです。
ひょっとすると、「環境デザインは何をやるのかわかりにくい分野だ」と思っている方もいるかもしれません。
そんな中で、勇気を持って独自の課題に取り組む人材を求めています。