田中さんのお話。

―――田中さんはこちらの地域の博物館の学芸員とお聞きしましたが、宇検では昔はどのような食生活だったのでしょうか?

おじいちゃんおばあちゃん達から聞き取りをすると、昔は本当に色んなものからデンプンを取っていたと聞きますね。もちろんその材料の一つに蘇鉄はありました。今なんて色んな植物からデンプンをとるなんて考えないじゃないですか。昔は正月と盆しか米を食べなかったので、あとはもう蘇鉄から取ったシンガユだったりナリガユだったりのお粥類が常用食、後は芋と。こっちはナリの実じゃなくて蘇鉄の木の中の芯の方のカユをよく食べていたんですよ、冷やして食べてね。40年前までは普通に食べてたそうですね。表面がつるつるつやつやしてるんですよ。

 

―――へー、こちらは冷やして食べるんですね。シンガユにしろナリガユにしろ、お米とその蘇鉄のデンプンの分量はその地域や家庭等によって違うと思うんですけど、それによって美味しかったという人も入れば、不味いって言う人もいて。

そうですね、宇検の方のシンガユはやはり「美味しい」って言って食べるものって感じではないですね確かに。やはりご飯が食べたいって言ってましたね。「シンガユ、美味しくないよ」って。まあ当時はソレしか食べるものがなかったのでしょうけど。10年前にここで記録のために蘇鉄の芯を取るところから作ったシンガユの記録がありますよ。

 

【シンガユの記事】

 

―――その聞き取りの話で蘇鉄についてのエピソードはありますか?

畑や田んぼに蘇鉄の葉を緑肥として入れるんですけど、その緑肥を踏んで土とならす時に裸足でやらなくちゃいけないんですよ。蘇鉄の葉って刺があるし葉もチクチクして痛いでしょ、だから子どもの頃に畑仕事に駆り出されて手伝う時はもうそれが嫌で嫌でって。遊びたいし、だからそれで親から逃げ出したり、というお話はみなさんよくされますね。

 

―――確かに、子どもの柔らかい足の裏であれを踏むのは痛いですね。手で触ってもチクッとしますし。

あとは、蘇鉄の葉を使って虫かごを作ったりだとか。芦検って集落があるんですけど、そこでは豊年祭ってお祭りの時に蘇鉄の葉で大きなアーチを作っているんですよ。

 

 

―――えー!すごい大きい!子ども達駆り出されてますね。

竹を芯材にしてその周りを葉で覆うんですが、これは子ども達の仕事で、蘇鉄の葉を取るところからやるんですよ。おっきくて長い釜を使って背の高い蘇鉄の木からもとるんです。葉の束ね方も大人に聞いて、子ども達で作って。伝統で昔から作ってるみたいなんですよ。今はもうやるところが減ってきちゃっているんですけど。

あとは昔のある一時期、蘇鉄の葉は出荷をしていたそうで。クリスマス用の葉っぱとして海外でよく利用されていたようですね。

 

【新聞の記事】

 

――えーっ!こんな新聞の記事まで残っているんですね。まさか宇検に来てまでもこんな蘇鉄について詳しいお話が聞けるとは思いませんでした。この宇検という小さな規模の集落だけでもこれだけ多様性に溢れていることが奄美の特徴のひとつであるな、と思いますね。ありがとうございました!

 

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