「素のまま展 next」 原田多鶴×北尾典子 2012年2月13日~2012年2月17日
/カテゴリ: 展覧会情報/作成者: t-tasu会場:アートギャラリーT+
会期:2012年2月13日~2012年2月17日
出展者:原田多鶴×北尾典子(芸術専門学群 デザイン専攻2年)
個々のパラダイムこそがユニークなのではないか という仮説から、「そのまま」を展示。
T+review
“物を再認識するような感覚を作品に”
展示のコンセプトは、身の回りにある、何気ない物のカタチを再認識できるような作品を生み出すこと。クリップや色鉛筆、パンの包装紙など、作品の素材はすべて日常生活の中のありふれた物たちだ。
デザイン専攻2年、原田多鶴。彼女の作品は、普段は「道具」として使用されるもの、つまりそれ自体が注目を浴びることのないような素材を用いている。
4色のカラフルなクリップを45℃になるように開いたものを円形に配列した≪45°≫は、今まで気づくことのなかったクリップの有するかわいらしいカタチ を提示してくれている。工業製品に内在する、人工的な数字。45°という数字から生まれる規則正しい形態は、シンプルながらも新しい感覚として自然と鑑賞者の記憶に取り込まれていく。また、≪arranged dots (study)≫と題された作品は、何種類もの小さな○がきれいに並んで描かれた、観る者の心を明るくさせるようなユニークな作品である。油性ペンを使用するときに紙の裏面にできる「しみ」。このしみは、本来意図して描かれることも、意図して見られることもない。私たちの意識の外にあるこのしみをあえて意図して配列することで、「意識と無意識の共存した不思議な画面が出来るのでは」と考えたという。これらは重ね合わせた紙の繊維のごく小さな隙間を通り抜けてきたインクの形跡である。
ギャラリーの奥の壁には、一際目を引く斬新な作品が展示されていた。同じくデザイン専攻2年、北尾典子さんの≪Evaluation≫である。垂直に交わる2本の矢印と、壁一面に散りばめられた無数のランチパックの包装紙。タイトル(evaluation=評価・査定)からもわかるように、色みや雰囲気の違いによって配された包装紙からは、その一つ一つがデザインされたアート作品であるということを主張しているかのような印象を受ける。(菊池美里)
「Story」 青野広夢 2012年2月6日~2012年2月10日
/カテゴリ: 展覧会情報/作成者: t-tasu会場:アートギャラリーT+
会期:2012年2月6日~2012年2月10日
出展者:青野広夢(芸術専門学群洋画3年)
「あなたの心から始まる小さな物語」パステル画の展示
T+review
暗幕で覆われた展示室の中。静かに扉を開ければ、そこにはやわらかなパステル画面の世界に住む動物たちがいた。
静かな宇宙空間の中、衝突してきたであろう隕石を背景に、月面のような場所で一つの石を拾うツキノワグマ。『今 僕がすべきこと』
だるそうに自分の手に顎を載せて玉座に伏せ、尻尾で王冠を持て余すライオン。『私が手に入れたもの』
青空の中、一番高くにある雲まで首をのばす青いキリン。『欲しいものがあるの』動物たちは細かく描写されているのに、リアルなどうぶつ、という感覚は生まれてこない。
それは、みんなそれぞれに、意思があるように感じるからだろう。
作品を前にすると、彼らとまるで一対一の対話をしているようだった。
動物たちは、自らの物語をかたりかけてくる。「ぼくはこうなんだけど、君はどうするの?」
その物語の内容は、鑑賞者によってひとりひとり違う。
自分だけの絵本の世界に飛び込んだような、そんな空間だった。
タイトルと合わせて作品からは、詩のようにメッセージがじんわりと沁みてくる。
どこか、自分の生き方について考えさせられるような奥深さももっていた。展示室を出た後、自分の心の奥底の世界に行けたような、
それがかわいらしい世界だったから素直に自分の心と向き合えたような、そんな気がした。
また、自分だけの物語が自分にどう語りかけてくるのか、もう一度この世界に来たいと思った。
そして今も、あの動物たちは私の心にそれぞれの世界で生き続けている。
彼らとまた対話できる日が来るまで、私も彼らとともに生き続けてゆく。(池田寛子)
「晴れ舞台」 市川絢菜 2012年1月23日~2012年1月27日
/カテゴリ: 展覧会情報/作成者: t-tasu展覧会「晴れ舞台」が開催されます。
会場:アートギャラリーT+
会期:2012年1月23日~2012年1月27日
出展者:市川絢菜(芸術専門学群洋画1年)
油絵の展示です。
6ステージを予定しています。
T+review
まず、そのタイトルセンスの良さに私は魅かれた。作品自体の魅力はもちろんだが、タイトル次第で作品の印象自体が大きく変わることもある。例えば、不思議ないでたちの女性が暗幕から何か呼びかけるようなポーズで顔を出している作品に「ステージ:やっほー」というタイトル。「やっほー」なんて字面だけでも愉快な気分にならないだろうか。他にも、日章旗のような太陽を抱えて座る女性を描いた「お天道様」。鱗状の衣装が特徴的な「魚」など、単純でありながらも作品のもつ楽しい雰囲気をより引き立たせるような言葉のチョイスは見事である。一枚の絵を一つのステージに見立てた展示室は薄暗く、ともすればお堅い雰囲気になりかねないが、作者のポジティヴなセンスが全体的に上手く作用することで場の空気まで変えていたように思う。また、作品自体も工夫が凝らされていて面白い。例えば、テカテカにコーティングされた画面や色面構成のような塗り方。いわゆる油絵のイメージを裏切るような表現技法を使いながらも、油絵にしか出せない物質感を持たせることで画面全体が不思議な印象を生み出している。また、各作品をステージに見立てることで展示全体が一つの演劇を作り出しているようにも見えた。
どんな物語があるのか。どんな世界があるのか。楽しくて、どこか不思議な「晴れ舞台」であった。(玉谷研太)