「うさ君展」片岡知紗 2012年6月4日~2012年6月8日

展覧会「うさ君展」が開催されます。
会場:アートギャラリーT+
会期:2012年6月4日~2012年6月8日
出展者:片岡知紗(洋画3年)

平面、立体の展示です。

T+review

ギャラリーに入ると、なんとも不思議な生き物たちが私を迎えてくれた。胴体や顔のパーツは丸みを帯び、体は鮮やかな蛍光色。二本足や四本足のもの、目が二つ以上あるもの、奇妙な触角が生えているものなど、その形は個体によってさまざまだ。彼らは一見ポップでキュートだが、その体からは時折脳みそが露出しており見る人をぎょっとさせる。露出した脳には針が数本刺さっていることもあるが、彼らはあくまで無表情であり、そこに痛みはないように見える。

 彼らの多くは、壁に掛けられたキャンバスの中で様々な空間にたたずんでいる。何処とも知れぬ暗闇の中や、街灯に照らされたベンチの上。あるいは、砂漠にどっしりとその体を横たえていることもある。ただ、原則として彼らは活発に動こうとはしない。人気のない空間で、どこか遠くを見つめている。私たちが作品の前に立ち、彼らのその奇妙な姿を見つめていても、彼らは決して私たちと目を合わせない。その視線は、目の前にいる私たちの存在を軽くすり抜けてどこまでも伸びていくように見える。

 さて、キャンバスの中でも十分魅力的な彼らだが、今回は立体として我々の住む3次元空間にも進出している。つるつるとした体に毛糸やフェルトをまとい、展示台の上でやはりどこか遠くを見つめている。その姿は、時にキャンバスの中にいるときよりも魅力的で、一匹一匹が「生き物」として強烈な存在感を醸し出している。吹き出しの形をしたキャプションには「もぐもぐ」「ふりふり」といった擬音が書き込まれ、平面世界にいる時よりも生き生きとして見える。

 奇妙な生き物たちが生み出す奇妙な世界。2次元から3次元へと進出してきた彼らがこれからどこへと向かうのか、まだ誰も知らない。(玉谷研太)


「ぱれっと展」 刈部芙美、髙橋凪沙、田中礼、坪坂萌 2012年5月28日~2012年6月1日

展覧会「ぱれっと展」が開催されます。
会場:アートギャラリーT+
会期:2012年5月28日~2012年6月1日
出展者:刈部芙美(洋画2年)
    高橋凪沙(構成2年)
    田中礼(構成2年)
    坪坂萌(洋画2年)

絵本の展示を行います。

ぱれっとimage


「ヒマラヤ」 上野郁代 2012年5月21日~2012年5月25日

展覧会「ヒマラヤ」が開催されます。
会場:アートギャラリーT+
会期:2012年5月21日~2012年5月25日
出展者:上野郁代(洋画4年)

山の絵画

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壁にかかっているのは、「まさにヒマラヤ」といった感想を抱かせるイメージの集合体だ。大きな四角形が10ほどに分割され、それぞれの画面には色彩やアングルが様々な山地が描かれている。夕日が当たっているように、柔らかいオレンジ色の光に染まっている山々。星空の下の山々。現実にはありえないような緑色で表現された山々もあれば、氷河のように真っ白な山々―私たちがよく目にするヒマラヤの姿―、闇に浮かぶ山々、と表情豊かな「ヒマラヤ山脈」が集まっている。
 「ヒマラヤ山脈」?ここで、不思議な違和感を覚えた。この描かれた山々は本当に「ヒマラヤ」なのだろうか?確かにこの展覧会の名前は、「ヒマラヤ」である。しかし描かれた山々がヒマラヤ山脈であるという情報はどこにも提示されていないのだ。作品を観るときに私たち鑑賞者は、展覧会名から受け取った情報を勝手に作品に結び付けてしまっているのではないだろうか、という問いが思い浮かぶ。本当はヒマラヤ山脈を描いた絵ではないのかもしれないのに、私たちはこの作品を「ヒマラヤ」だと思い込む。これは、情報を頼りにするという普段からの姿勢の表れなのかもしれない。
 私たちがある作品を観るとき、なんらかの先入観、前情報をもたずに観ることはできるのだろうか。先入観は、作品が伝え得るものを限定する。つまり、私たちが受け取り得るものも限定するのである。この展示「ヒマラヤ」を、描かれた山々がヒマラヤ山脈であるという思い込みの情報を持たずに観たとき、描かれた山々に残っているものは何であろうか。それは、山が純粋に一山として持つ個性であろう。描かれた山々が「ヒマラヤ山脈」と決まる以前に一つの「山脈」として持っているもの、表情、それらが純粋な状態で画面に留まっているのではないだろうか。夕日を浴びてオレンジ色に染まっているこの山は、ヒマラヤ山脈なのかそうではないのか。どちらにせよ、純粋な「山」のイメージの存在が画面にあるのだ。(岡野恵未子)


「スイッチつきのタップ」 和田晴奈 2012年5月14日~2012年5月18日

展覧会「スイッチつきのタップ」が開催されます。
会場:アートギャラリーT+
会期:2012年5月14日~2012年5月18日
出展者:和田晴奈(総合造形4年)

5月のまんなかにやる展示です。

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ギャラリーに入って、芳名帖に名前を書き込もうとすると、
目の前には「世の中には、よくできている物とそうでない物があると思います」との、展示者のメッセージ。
ギャラリー中央に置かれた机には「スイッチのオンオフを切り替えてご鑑賞ください」の文字と、スイッチ式のコンセント。
その横には、「大さわぎ」と「小さわぎ」とかかれたキャプションがある。
机の前に立つと、天井から無数に下がっている黄色いスズランテープがカーテンのように私の視界を遮る。
そのカーテンの下には、こちらに顔を向けている一台の扇風機があった。
さらにその奥には、横を向いたギターとその目の前に置かれた扇風機がもう一台。
ちょうどギターの前に、天井から垂れさがって来ている黄色と黒の縞縞の縄がある。

試しに、2つあるうちのスイッチの一つをオンにしてみると、ギターの前に置かれた扇風機が作動し、
縄が風にあおられて揺れた。
すると突然、ギャラリー内にボーンという音が低く響く。揺れた縄がギターの弦に触れ、音を奏でたのだ。
縄の揺れは不規則で、いつギターの音が響くかは分からない。しかし突然鳴るからこそ、ギターの音の支配力は増す。
ギャラリー全体が一瞬音に包まれ、私の意識も持っていかれる。

一旦スイッチをオフにして、今度はもう一方のスイッチをオンにしてみた。
すると今度は目の前に合った扇風機がこちらに向かって風を送り、
目の前に合った黄色のスズランテープがばさばさと私めがけて手を伸ばしてくる。

ギターが音なら、こちらは動き。

「騒がしい」という感覚の、2つの要素をそれぞれが担っているような気がした。
二つのスイッチを同時にオンにしてみると、スズランテープがばさばさする視覚的うるささと、
ボーンと耳に響くうるささが同時に私を襲ってきて、ギャラリー内は大騒ぎになった。
一つ一つの現象ならば目をつぶること、耳をふさぐことで回避できるが、二つ同時に起きると、その騒ぎから私は逃れることが出来ない。
スイッチを入れるというとても簡単な動作。
ONにするだけでモノが動き、中途半端な動きは一緒になって、大騒ぎをし出したのだった。(池田寛子)


理髪店「サロン ド オサレ」 石田かずみ、松添由夏 2012年5月7日~5月11日

展覧会「理髪店『サロン ド オサレ』」が開催されます。
会場:アートギャラリーT+
会期:2012年5月7日~2012年5月11日
出展者:YUKA×kajumin
    石田かずみ(総合造形4年)
    松添由夏(ヴィジュアルデザイン4年)

エンゼル山田のステキなヘアサロン。アニメーション&インスタレーションです。
http://www.kajumin.com/yukajumin

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 YUKA×kajuminの二人による、理髪店をイメージしたアニメーション&インスタレーション。この二人は以前も「ヒトリアソビ展」でもアニメを使ったインスタレーションを行っていたが、今回はその手法がより一層強化されていて見応えがあった。
 まず、人目を引くのは暗幕に覆われたギャラリーの外観だ。天井からは理髪店を想起させる赤青白の垂れ幕がつけられ、中央にはおしゃれにレタリングされた「サロンドオサレ」の文字が躍る。外から中の様子をうかがい知ることはできず、自然と期待感が高まる。
 扉を開けて中に入ると、そこは確かに「理髪店」であった。左の壁には3台の椅子が並び、見上げると可愛らしい「先客」が髪を切っている。実際のところ、それは壁に投影されたアニメーションなのだが、床に散らばった髪の毛があたかも本当に客がいるかのような錯覚を起こさせる。どうやらこの店では理髪師は姿を現さないようで、壁の中から出てきた手だけが次々とお客の髪を個性的に切っていく。髪は変幻自在に形を変え、伸びたり丸まったり、宙に浮いたりする。それは単なる散髪というより髪とハサミを使ったショーのようだ。
 さて、不思議なヘアカットに見とれつつ、ふと隣の壁を見ると何やらたくさんの肖像画が飾ってある。どうやらヘアカタログらしい。その小さな可愛らしい姿と独創的なヘアスタイルに見とれていると、不意に一人が瞬きをして驚かされた。よく見ると小さな額の中の肖像一つ一つが生きているかのように瞬きをしている。これもまた、壁に投影されたアニメーションなのである。一つ一つが本物の額縁の中に投影されているので、まるで本当に絵が飾ってあるかのように見えるのだ。
 この他にも、流れる音楽やさまざまな小道具などの要素が絡み合い、不思議で魅力的な「理髪店」を演出していた。エンゼル山田のステキなヘアサロン、またどこかで営業することがあれば是非足を運んでみたい。(玉谷研太)

サロン ド オサレ