「kitchen」 刈部芙美 2013年6月3日~2013年6月7日
/カテゴリ: 展覧会情報/作成者: t-tasu会場:アートギャラリーT+
会期:2013年6月3日(月)~2013年6月7日(金)
出展者:刈部芙美 (美術専攻洋画コース3年)
台所をテーマとした、油絵等の作品を展示します。
T+review
台所をテーマにした展覧会だと聞いたとき、どのように台所というものを表すことになるのかイメージが湧かなかった。台所はあまりにも生活に密着した場所であるので、改めて画題として捉えるということが―客観的に表すのか、感情をこめて表わすのか―難しそうだと感じたからだ。
展覧会全の内容は食べることや料理することにまでテーマが広がっていたが、そうではなく台所の姿のみに絞っていったらより面白かったのではないかと思う。彼女の描いた台所からは、自分にとって身近であり思い入れが強い場所という印象も感じつつ、客観的に台所を見ようとする姿勢が感じられる。彼女が描いた台所を見て、なんだか作者の肖像画のようだと思った。
ちょうどシンクの少し後ろに立っているような視点で描かれた台所。正面にぶら下げられたフライ返し、向かって左側には電子レンジと冷蔵庫、右側には牛乳パック。物体として、場所として“ありのまま”の台所の姿を描きながら、色彩を現実のものと変えるなどして感情も表わそうとする作者。彼女に台所を描かせたのは、記録として台所の姿を残したいという思いだけではなく、自分の姿―一人暮らしを始めてから今までの―を台所に重ね、自分自身を見つめたいという思いだったのだろう。(岡野恵未子)

「Pit Pit」 尾崎拓磨 2013年5月27日~2013年5月31日
/カテゴリ: 展覧会情報/作成者: t-tasu会場:アートギャラリーT+
会期:2013年5月27日(月)~2013年5月31日(金)
出展者:尾崎拓磨 (構成専攻構成領域3年)
画材屋さんで材料を買ってこなくても、身の回りのちょっとしたものからでも作品はうまれます。今回は付箋紙で作品をつくりました。
T+review
色彩の世界がそこに広がっていた。
決して特別なことはしていたわけではない。だが、ギャラリーの一面に展示された作品からは噎せ返る程の色彩が溢れている。見慣れた文房具である付箋が、色彩に着目し表現という要素が加わっただけでこうも生き生きと色彩を放つのかと目を疑ってしまった。色彩とは不思議な、だが、視力を持つ者にはかげがえのないものだ。
わたしたちの暮らす世界には色彩が溢れている。それは太陽の光の恵みであると同時に、生命そのものである。
日常にある些細な色彩に目を向けること、そしてそれを十分に輝かせることは、それはひょっとすると『生きる』という行為に最も近い作業なのかもしれない。 (太田夏希)

「絵だ。」 大脇聡史 2013年5月20日~5月24日
/カテゴリ: 展覧会情報/作成者: t-tasu会場:アートギャラリーT+
会期:2013年5月20日(月)~2013年5月24日(金)
出展者:大脇聡史(美術専攻洋画コース3年)
絵だ、えだ、枝、絵だ、枝の絵だ。
既成のキャンバスを用いずに枝で絵を描くとどうなるか、やってみました。
T+review
絵だ。木の枝で描かれた絵だ。
その展示タイトルに含まれた遊びに気がついたとき、誰もがくすっと笑ってしてしまうだろう。ギャラリーに並ぶのは何本もの木の枝を組み合わせて作り出された作品である。それらは人工的に着色された枝と自然の木の皮の枝の2つで構成されている。
「既成のキャンバスを用いずに枝で絵を描くとどうなるか、やってみました」という作者の言葉通り、作品はとても実験的であるように感じる。自然と人工の織りなすその構造体は見る人によって違った印象を与えるかもしれない。感覚的に形成された作品の荒々しさとその爆発的な造型表現からは作者の挑戦的な姿勢が伺える。中でもひときわ目立つのは、ギャラリー正面の壁に展示されている「日本」である。赤色に塗られた木の枝はいくつにも重なり合って円を描いている。それは横長の白い壁面の真ん中にどっしりと構えている。作者は白い壁さえもキャンバスに変えてしまったのだ。
一方で、ギャラリーの床には砂場が作られている。その横には木の枝が用意され、キャプションには「ご自由にお描き下さい」の文字。展示を見に来た人たちが気の向くままに砂浜に絵を描くように落書きをしている。非常に茶目っ気のあるおまけである。作者はきっと少年のような遊び心を持った人物なのだろう。そして躍動するエネルギーに溢れる作品たち。彼の中のユーモアとセンスが、彼の手によって芸術表現に転化した例証が、ここにはある。(高橋和佳奈)

「wako」 武田萌恵子、藤原さや 2013年5月13日~5月17日
/カテゴリ: 展覧会情報/作成者: t-tasu会場:アートギャラリーT+
会期:2013年5月13日(月)~2013年5月17日(金)
出展者:武田萌恵子(構成専攻クラフト領域3年)
藤原さや(構成専攻ビジュアルデザイン領域3年)
漆とイラストレーションの二人展。
「流れと蓄積、木理と時間」、「女の子と植物、ペンと曲線」をそれぞれのテーマとし、思い思いに制作しました。
ぜひお越しください!
T+review
はたして、これは二人展なのだろうか。
「木とイラスト」という展覧会名の副題から、二人がそれぞれに作品を出展しているのだろうとギャラリーに入ると、その予想は間違ってはいないが正確ではないと感じた。なぜなら二人の作品から、ギャラリーという一つの空間の中を住み分けているのではなく、空間を共有しているという印象を受けたからである。ギャラリーでは二人の作品が入り混じって配置されている。また、キャプションが設置されていないため作品達が一つ一つ独立しているような印象は受けず、それゆえ互いの作品の関係性は曖昧だ。互いを説明し合っているような関係でもなく、また、同じテーマを違った表現方法で見せているような比較の関係でもない。まるで二人で一つのインスタレーションをしているように感じた。木の形の大部分を残したり、特別な装飾をしなかったりと、一見できる限り表情を抑えたように見える、武田の木工作品。しかしその分、木そのものの豊かな表情が感じられ、鑑賞者に静かに語りかけてくるようだ。
そして、藤原のイラストレーションは、緩やかにうねる曲線が集まり面を作り、日本風の女性を形作っているというもの。余白と面の境界線は曖昧で、流動的でじわじわと広がっていくようなイラストレーションである。細かい線の集まりは何かを説明しているように見えるが、その意味よりも形態が生む空間や動きに注目させられる。
簡潔に見えて雄弁な木工作品と、多くを語っているように見えて純粋に造形をしているイラスト。二人の作品は互いにバランスを取っているゆえ、ギャラリーの空間の統一感が生まれているのではないか。その作品たちは、それぞれの作品が独立した役割を持っているのではなく、全体で一つの空間を効果的に作っているのだ。(岡野恵未子)
