「九州展№006~90309~」 池田傑、他 2011年2月28日~2011年3月4日
会場:アートギャラリーT+
会期:2011年2月28日~2011年3月4日
出展者:
池田傑(人間総合科学研究科 芸術 1年)
九州出身者による、平面・立体作品の展示。
九州出身者による、平面・立体作品の展示。
本年度制作した絵画作品の中から数点展示致します。
T+review
―ヒラヒラした葉を持つ植物、大きな鳥の羽根、女の子の髪の毛、煙、虫の眼、お化け、キスするカップル、美しいくびれ、ビーナス、血管、犬、涎の滴る舌、砂利、桃色の鳩、手品、恐竜、貝殻、手の甲、飛行機雲、心臓、宇宙の星、オーロラ、古代と今と近未来―
ザッと眺めるだけでこれだけの物事を連想させるいろかたち。思い付くままを並べ立ててしまえば雑多なようだが、画面はスマートにまとまっている。彼女の一部であろうものが散りばめられている様にも見える。実際モチーフにしているものはひとつ、ないしはふたつほどかもしれないが、その中にもっともっと無限なテーマが散りばめられているように感じられる。彼女もこの作品を描く間にわたしと同じことを思い浮かべていたのであろうか。手がかりをわざと沢山残してわたしを翻弄しようと図る知能犯に見えるが、実は気ままに頭に浮かんだまま思ったままの像を自分用の日記のように綴っている人なのかもしれない。
重ねられる色彩は緑!ピンク!と保育園のお絵描きに使ったクレヨンのように、単純明解な色の区別は出来ない。色を重ねているはずなのに透き通り、どこまでも地に行き着かない。ぐんぐん進んで行くうちに「あちらがわ」に出てしまいそうだ。
じっと黒の線を追っていくと、白雪姫が森に迷い込む途中、周りの動植物が笑い出す場面が思い浮かべられた。はたまた、尾形光琳の意匠の効いた生きているかのような波の表現が連想された。そして何故か、家族でお好み焼きを食べるときに鰹節をかける父親が『ほらっ!生きてる生きてる~‼‼』と言うのを、半分信じる幼い頃の自分がいたことを思い出した。彼女の画面の中では、普段人間のように動いたり言葉を話したりしないようなものが、「生きてる」感じがしたんだ、と思う。
目に飛び込んでくるもの一つ一つにはそれぞれの物語があった。怪獣映画のように。というのも、わたしにはただの植物が、ただの植物ではなく大きな亀や鳥、大げさにはゴジラにすら見えてきたからだ。勝手な解釈にはなってしまうけれど、彼女の中にこんな衝撃的なストーリーが幾つも隠されているのかと想像するとかなり面白い。少女の頃の続きが気になって仕方がない時のようにワクワクする。美しい描写のくせに、表面だけでなくこんなに内容も魅力的なのは、ズルイ。(辻真理子)