「Shortcake Girls」武石早代 2016年10月17日~10月21日
会場:アートギャラリーT+
会期:2016年10月17日(月)~10月21日(金)
出展者:武石早代(構成専攻VD領域4年)
ショートケーキがあれば、女の子はいつもしあわせ。
T+review
壁一面に、ケーキを食べる女子達の笑顔が輝く。白いふわふわしたショートケーキは幸せの象徴のようで、生クリームの上にのった苺の鮮やかな赤が映える。『Shortcake Girls』は、女の子たちがショートケーキを素手でほおばる瞬間をとらえた写真を飾った展示作品だ。写真枚数は100枚を上回る。それだけの数のケーキを作者は調達したのかと無粋な事が頭をよぎりそうになるが、そんな思考をどこかへ追いやるほどの多幸感のあるパワーをこの写真たちは持ち合わせているようにも思える。実際、写真の中の笑顔を見渡すだけで、見ているこちらも言いようのない楽しさに包まれる。ケーキにはそんな力があるのか。
作者のキャプションに「ケーキがあれば、いつだってしあわせ」とある。ケーキはたしかに幸せの象徴とも言えるかもしれない。誕生日を始めとした祝いの席、クリスマス、記念日などに食卓にケーキが乗ることは一般家庭においてもさほど珍しくない光景だろう。しかしケーキが幸せの象徴のように思われるのは、ケーキは特別な日に食べるものであると同時に、ケーキという食べ物自体に特別な価値があるように感じるからではないだろうか。ケーキは白米のようにいつも食卓にある類のものではない。多くの人が幼少期よりケーキに対して、「お祝いの日に特別に食べるもの」としてスペシャリティーの高いイメージを持ってきたのではないか。そんな植えつけられたような意識があるから「特別な日を祝うためにケーキを食べる」というより「ケーキを食べることは特別で嬉しいこと」として無意識に認識しており、だからケーキ自体が特別な食べ物に感じるのかもしれない。
家庭になじみが深いのに何か特別なこの洋菓子が引き出す幸せな表情の数々。それを丁寧に映し出した写真から、ケーキの持つ幸福の力を感じた気がした。(山崎祥香)
