「大脱走。」 太田夏希 2013年4月22日~2013年4月26日

展覧会「大脱走。」が開催されます。
会場:アートギャラリーT+
会期:2013年4月22日(月)~2013年4月26日(金)
出展者:太田夏希(美術専攻日本画コース2年)

「わたし」が「私」から逃げ続けておよそ20年……
これはそのすべてです。

T+review

その空間は「彼女」の世界だった。
ギャラリーに入ると正面入り口に「順路」と書かれた先に梱包材に包まれた空間がある。壁には落書きから自画像のデッサン、ラフに描かれた顔のスケッチ、幼少時代の絵日記など、過去から現在までの作品がごちゃごちゃと展示されている。そのせいだろうか、一つ一つの作品の時間軸が狂って見える。そしてそれらは上下逆さに吊るして展示してあり、妙に不気味な雰囲気を感じる。時折天井から吊るしてあるカウンターが空中で揺れているのがチラチラと視界に入る。
大脱走 − 彼女が20年間逃げ続けてきたものは彼女自身だ。自分を描くと同時に自分から逃げてきたのである。

現在の「わたし」を構成し、今もその中で「わたし」を監視し続ける「私」を吊るし上げ、ひとときでもいいから「私」から逃げ出したいと想った。(展示者談)

逆さの世界に一枚だけ正面を向いているのは《モナリザ》だが顔の部分がないパネル。その作品は彼女の心情を物語っているようである。吊るされた彼女の顔たちが、まるで私たちのアイデンティティの喪失を誘発してくるかのように見つめてくる。自分が自分である意味とは、「わたし」とは一体誰なのか。自分が何者か分からなくなったときの恐怖は、子どもの頃に迷子になり家に帰れなくなった時の感覚と似ている。そこにあるのは、泣きたくなるような現実だ。(高橋和佳奈)

2013.04.22-大脱走