「ぴかぴかしてる」 山越梓 2013年11月18日~2013年11月22日
会場:アートギャラリーT+
会期:2013年11月18日(月)~2013年11月22日(金)
出展者:山越梓(構成専攻総合造形領域3年)
漠然とある事象にどうやって関係を結べるのか。
T+review
このタイトルを聞いてギャラリーの様子を見たとき、多くの人が「そのとおりだ」と思うのではないだろうか。ギャラリーの中では、天井からつるされた電球がランダムに点滅し、文字通り“ぴかぴかしてる”。壁には銀色のアルミシートや小さなペインティングがあり、床には砂が丸い形に敷かれている。電球が点滅すると、それらが照らされて“ぴかぴか”する。展覧会のタイトルが、ギャラリーの事象をそのまま説明しているようだ。しかし段々と、この直接的な描写に思えるタイトルが実は、ごく曖昧なものなのだと感じられてくる。
“ぴかぴかしてる”という言葉には主語が無い。我々は反射的にそれを3人称の、自分とは無関係に起こっている事象だと感じる―“寒い”“明るい”“ざわざわしている”のように―が、本当に“ぴかぴか”していることは私たちとは関係のないことだろうか。よく見ると、光っているのは電球はもちろん、アルミシートの反射やガラスへの映り込みも電球の点滅に伴って“ぴかぴか”しており、そして自分さえそれらの変化する光に照らされていることに気付く。自分以外のものだけではない、私たちも“ぴかぴかしてる”のだ。
自分とは関係なく起きていると思った事象に、いつのまにか巻き込まれている曖昧さ。この曖昧さは、作者がこれまでテーマの一つにしてきた“記憶”にも関わってくるものであるように感じられる。“記憶”を思い起こす時、誰がどうしたのか?何が変わったのか?何がどんな様子だったのか?などのようにと、私たちは自問する。その過程で、無意識のうちに自分とその出来事の関係が設定され、事実と想像は入り混じって、主語が記憶の中で変わっていたり主体が不明確なまま記憶が残ったりする。この不明確さは、今回の展覧会で“ぴかぴかしてる”ものを説明するときに生まれる曖昧さと似てはいないだろうか。身の回りの出来事は私たちと無関係に起こっているのではない。私たちはそれを体験している・記憶しているという時点ですでに出来事に巻き込まれており―つまり、その出来事と自分との関係をはかっており―、その記憶の中で“ぴかぴかして”いるのである。(岡野恵未子)
