「空の呼びかけ|empty calling」 高橋大地 2013年8月25日~2013年8月30日

展覧会「空の呼びかけ|empty calling」が開催されます。
会場:アートギャラリーT+
会期:2013年8月25日(日)~2013年8月30日(金)
   ※オープンキャンパスのため8月25日(日)から開館
出展者:高橋大地(構成専攻総合造形領域4年)

身のまわりの誰か、あるいは遠く離れた誰でもないだれかに対して、どう自らを開くことができるのか。そんなことに関心があります。

T+review

「今、見えているもの」と「今、見えていないもの」に同時に向き合うこと。それがこの展覧会で鑑賞者がしなければいけないことだ。しかも、その「見えているもの」と「見えていないもの」は鑑賞者の目の前でくるくると切り替わる。
 《思考のプラットフォーム》は、鏡の表面にラッカー塗料がボーダー状に塗られている作品だ。鏡に映る像を見ようとすると、どうしても表面のボーダーが邪魔をする。それゆえ、映りこんでいるものに集中しようとするとボーダーを「無視」しなければいけないのだ。逆に表面のボーダー模様に意識を向けると、鏡に映りこんでいるものは目に入ってこなくなり、鏡という素材(モノ)とその上に塗られた塗料とが見えてくる。鏡に映りこんでいる像と、鏡というモノは、もちろん同時に存在しているものだが、同時に見ること―つまり両者に同じだけ意識を向けること―はできない。モノだと意識できる部分を無視して映りこんでいる像を「見る」か、映っているものを無視してモノとしての鏡を「見る」か、どちらかに集中せざるを得ないのである。《無題(イマージュ)》も同様に、光沢のある黒い画面に映りこんでいる像とそれが映っている画面の素材とを切り替えて見なければいけない。
《the Books》もまた、「見る」ことを切り替えることが必要とされる作品だ。まるで透明な本棚の上に並べられているかのように、底部をそろえて宙に固定された本たち。この作品で、見えない本棚を意識しているときは本というモノの存在感は薄い。重力を感じない。一方、本というモノに注目しているとき、見えない本棚は“見えない”のである。
見方を二通り使わなければいけないこの作品たちとは、必然的にゆっくりと向き合う時間が生まれる。同時に存在しているものなのに、一度に観られない。そんなもどかしさと不思議さが、鑑賞者を包む。静かで緊張した空間の中で、何かを見るときに私たちはいったい何を見ているのだろうかということをじわじわと感じた。(岡野恵未子)

20130825-空の呼びかけ|empty calling