「POP展」 幣島正彦、柴間智恵子 2012年10月15日~2012年10月16日

展覧会「POP展」が開催されます。
会場:アートギャラリーT+
会期:2012年10月15日(月)~2012年10月16日(火)
出展者:幣島正彦(美術専攻洋画コース3年)
    柴間智恵子(美術専攻洋画コース3年)

POPの展示をします

T+review

展示を見に行こうとギャラリーに向かうと、窓ガラスにぐるりと折り込みチラシが敷き詰められている異様な光景に思わずぎょっとさせられた。そして「POP展」という展示名から展示の内容を想像しながら中に入ると、待ち受けていたのは文字通り普段の生活で見慣れたPOP広告。それが壁一面に並べられている。しかしそれらに記されているのは、通常のように商品の名前や特徴ではない。たとえば、「『自分が情けなくなる』後輩のしっかりした態度 税込 498円」「『あ!…くる…かも…』地震直前の感じ 税込 1580円」など…。感情や記憶、習慣といった、本来ならば値段をつけることのできないものたちが、POP広告という姿で私たちに話しかけてくる。
それらの言い回しにクスリとさせられたり、ある感覚が見事に言い表されていて思わず共感したりしながら眺めていると、一つ一つの広告を読むことだけに終始してしまいがちだ。しかし、そうしているうちに楽しさだけではなく何かじわじわとした違和感を覚える。この感覚は何だろうか?そこでふと気付く。ここで不思議な感覚になるのは、POP広告になりえない言葉がPOP広告になっているからだけではない。POP広告になることによって、すべての言葉の強さが均等化されてしまっているからだ、と。
あの独特の赤い字体や黒い枠線など、まさに代表的な「POP広告」の要素が使われている言葉たち。POP広告というかたちで表現されたこの言葉たちは、すべて同じ字体ですべて同じテンションで記されている。しかしもちろん、人が普段発する言葉はこのように一様なものではない。伝えたいという強さやまじめさなどといった伝え方が、その時その時によって変化するものであろう。そのように自由に動き回る言葉達を押さえつけてPOP広告という形にはめ込んだ結果、言葉が持つ重さは均等化されている。感じた不思議さは、強いはずの言葉も弱いはずの言葉も伝え方がそろっている違和感だったのだ。(岡野恵未子)