「Inter-surface」高橋大地 2012年10月29日~2012年11月2日
会場:アートギャラリーT+
会期:2012年10月29日(月)~2012年11月2日(金)
出展者:高橋大地(構成専攻総合造形領域3年)
どこまでも露出し直面する(しかしまた往々にして見過ごす)現実と、「想像」によって補完せずには触れ得ない現実に関心があります。
T+review
―露わになった現実から目を背けること。
隠された現実を知ろうともがくこと。―(展示者のメッセージより)鏡、蛍光灯、コード、地図。どれも幾度となく目にしているものであるにもかかわらず、何故か胸騒ぎがした。大変なところへ足を踏み入れてしまった、そう感じたことをはっきりと記憶している。
ギャラリー入口正面に展示されていたのは≪reflection/emission≫。鏡に取り付けられた蛍光灯を見てダン・フレイヴィンを思い起こした人も少なくないだろう。しかし、両者の“光”は決して同じ意味合いを含んではいない。展示者の蛍光灯の光はあくまで日常的に使用する道具でしかない。作品の前に立つと嫌でも鏡に映った自分の姿が目に入り、思わず顔を背けた。
その左に位置するのは、≪blind≫と題されたストライプ状にローズレッドのアクリル絵の具が塗られた鏡。映り込む世界が見え隠れする。すべてを捉えることはできない。冒頭に並べた言葉-露わになった現実、隠された現実-が頭を過る。
右端にはキャンパスに埋め込まれた多数の電球と天井に伸びるコード。まるでキャンパスから生まれ、懸命に生き、それから天に昇ってゆく生命体のような印象を受けた。生きている、そして、死んでゆく。それは永遠に変わらない事実でありながら、私たちが目を背けている現実でもある。左端には、着色された山と、福島の地図。
私たちが知らなければならないこと、知りたいと思っていること
忘れてはならないこと、忘れてしまいたいこと
光が日常で使われること、暗い部屋で震えたこと
何かしたいと思ったこと、何もできなかったこと
たくさんの命が失われたこと、今を生きているということ人は自分の信じたいことだけ信じ、見たいものだけ見る。取捨選択されたそれぞれの現実を生きている。
偽りの現実と本物の現実。
苦しくても良い。必要なのは偽物ではない。
ギャラリーを出るといつもよりどこか重々しく、しかしはるかに鮮やかな日常が待っていた。(菊池美里)