「i.m.y.m.e.」 藤田渚 2011年10月3日~2011年10月6日
会場:アートギャラリーT+
会期:2011年10月3日~2011年10月6日
出展者:藤田渚(総合造形M1)
I love me, and love me.
T+review
ギャラリーの窓、壁、床には作者のさまざまな時期の個人写真が所狭しと並べられていた。作者は部屋の中央に置いてある背もたれの深い椅子にゆったりと腰かけて、時たま訪れる知り合いと写真を見ながら談笑していた。
私は、自分の日常の記録に囲まれながら平然と座っているなんてとても恥ずかしくて真似できないと思った。ひとしきり見回ったあと、作者に疑問に思ったことを尋ねた。T+ギャラリーで展示をする理由、自分の写真を並べ、本人がそこに居る意味、等々である。作者の言葉を要約すると「自分に興味はないし、個人写真を並べることに意味はないが、他人と触れ合った私の人生を一度振り返ってみたかった」ということであった。私はこれらの言葉に、作者の強い意志が感じられた。作者にとって、すべての行動は肯定されて当然なのだ。自分に興味を持たないのは難しいことだが、作者はそれをやってのけている。その証拠に、写真やポートフォリオには裸体やそれに準ずる作者の姿もあった。どんな姿をどこにさらしても、作者にとってはなんの問題でもないのである。
作者はこの展覧会を通じて、人間の素晴らしさを伝えていると私は感じた。私たちは、日常で起こる事象の嵐のなかで生活をしている。自分の身に起こるさまざまな出来事に喜怒哀楽を感じて翻弄されたりもするし、意味のないことをするときもある。人間の感情や行動の確実な観測は不可能に近い。しかし、作者のように行動の一瞬を切り取った写真に取り囲まれても、構えずに座っているその自然な姿の「私」を常に忘れないでいれば、自分や他人のどんなことも受け入れられるのではないだろうか。展覧会の題名である「i.m.y.m.e.」は、英語で自称を表すときに使う「I.My.Me」を意味すると考えられるが、これにはたとえどんな状況に置かれていても、自分のことすべてを肯定しようという作者からのメッセージが込められているのだ。今回の展覧会の情景と題名は、私の心の深いところで強く残った。(内藤航)