「I FELL IN LOVE AND BROKE IT」 Caroline Näslund 2010年11月8日~2010年11月12日

展覧会「I FELL IN LOVE AND BROKE IT」が開催されます。
会場:アートギャラリーT+
会期:2010年11月8日~2010年11月12日
出展者:
Caroline Näslund(総合造形 特別研究学生(院生))
Installation and drawings about failure (and love).
T+review
まずギャラリーへ足を踏み入れると、作品たちの“黒”という統一感から来る静寂に包まれる。それはギャラリーの白い壁によって効果を増しており、その静寂によって壁にかざられた生活品のイラストたちは、黒い額縁の中でますますその存在感を獲得している。
描かれた題材はティーバックやパンツなど、少しひねった面白い目線で選ばれている。白い画用紙の真ん中に黒い線で描かれたそれらは、普段私達が気付くことのできない個性に溢れている。イラストをじっくりと鑑賞していると、作者の身の回りの物に対する目線が、どこかユーモラスでいて愛情に満ちたものなのではないかと暖かな気持ちにもなるが、その気持ちで終わるのを妨げているのは、黒い雲である。ギャラリーの中央に置かれたまっ黒なベッドの上に立ちこめている、まっ黒な雲。それは、眠れない夜に止めどなく溢れてくる考え事を表しているようである。思考はだんだんと不安や不満に変わり、余計眠れなくなるどころか不幸感さえ湧いてくる孤独な夜。それらはすべて黒い雲となりベッドの上を覆い尽くす。雲に囲まれてしまった空間へは、いつも私の身の回りにいる生活品たちも近づくことはできない。それらにいくら個性や愛着があろうと、思考の連鎖が生んだ暗雲は自らで打破するしかないのである。しかし来る日も来る日も夜になれば暗雲は立ち込め、なんて自分は小さいのだろうと、iの無力さに打ちひしがれる。これは誰もが恋をしているときに経験したことがあるのではないだろうか。相手のことばかりに思考が支配されて、心に平安などは到底訪れない。この展示はそんな作者の心の中を具現化したものでもあるのかもしれない。我々はその世界の中を彷徨い楽しみ、だんだんと不安に駆られ、最後には、それぞれの心にあるまっ黒な雲は、自ら打破するしかないのだということに改めて気づくことができるのである。(池田寛子)