「私の心はティッシュペーパー」 和田晴奈 2010年10月4日~2010年10月7日

展覧会「私の心はティッシュペーパー」が開催されます。
会場:アートギャラリーT+
会期:2010年10月4日~2010年10月7日
出展者:
和田晴奈(芸術専門学群 総合造形2年)

自分についてのインスタレーション

T+review

素直で正直。幼少の頃にはそうあるように教えられ、私自身もそうあるべきだと思っていたし、今も思い続けている。しかし、成長するにつれ、自分の中でごまかせることはごまかす、嘘で通せることなら嘘で通す、本当の自分でない姿を周囲に対してでっちあげる、曖昧なことや答えが出ないことは考えないように、少しずつ少しずつ見えない何かにそそのかされてゆき、首尾よく状況に対処する能力もついてくる。全てをそつなくこなす立派(だといわれているよう)な大人になるためには、時や場所・環境に合わせて自分を柔軟に変化させねばならないのであろう。今展示は、自分の内面と向き合うことや他者から見た自分を意識するという、面倒で忘れようとしがちな論題を正面から突き付けている。ホワイトキューブの閉鎖的な空間に居るティッシュペーパーは私に、気まぐれで素直な心を持った女の子の存在を伝えてくれた。
一人間として、どのような姿であることが理想的なのかという疑問はいつも私に付きまとっている悪魔のような存在であり、しばしば私を日々の喜びの花畑から突如として悲痛の荒れ地へと連れてゆく。ところが、自分の精神をティッシュに例えた作品、次々と見えない風に軽く飛ばされる、というよりは上手く風に乗って行く鳩のようなティッシュペーパーを眺めていたら、なんとも平安でバランスのとれた心地良さを自分の心に見出した。他人の影響を受け、場の空気に流され、些細なことに打ちのめされる自分を発見した和田の心は、それが嫌だとも好きだとも言わずに、ありのままでユラユラフワフワとあっちへこっちへと漂い、辿り着いた先で貴重なひと時を過ごし、また好い風が吹いたら違う場所へ動く。訪れる先々で、皆に親しまれ、いろいろな方法で使われる。なんともひょうきんでどこにでもありそうだが、ないと困る尊い存在ではないだろうか。
ティッシュペーパーは柔らかく私たちの肌に優しく触れてくるが、一方で、それ自体の素材は繊細で、ある意味脆い。それでも、時には幾重にも重ねて、時にはこよりにして、うわべではなく、実際に強く逞しく活躍する。ティッシュペーパーのその性質も少女に当てはまるのではないか。そんな風に想像力を掻き立てる、すがすがしい空間であった。(辻真理子)