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深沢幸雄「午睡の情調B」

作者生没:1924 南巨摩郡増穂村[富士川町](山梨)-2017 市原(千葉)
制作年:1993年
技法材質:メゾチント・アクアチント
寸法:49.2 x 35.8 cm
エディション:3/75
署名等:マージン右下に署名「Y.Fukazawa」; 同左下隅に題名「午睡の情調B」

展覧会歴:「紙上の技法学 筑波大学所蔵 石井コレクション」2012年1月7日-2月19日 武蔵野市立吉祥寺美術館 cat. 47。

文献:寺門臨太郎編『筑波大学所蔵石井コレクション Ⅰ. 絵画』、筑波大学芸術学系、2011年、cat. 68。

所蔵番号:2010-JP-IS015

作品解説:
1981年以降、深沢はそれまでのエッチングやエングレーヴィングによる線の表現から、アクアチントとメゾチントを中心とした面の表現へと軸足を移した。さらに、1964年の《赤い仮面》を中心とする一連の作品で用いた多色銅版画の技法をさらに発展させ、独自に開発したメゾチント製版機によって大判のカラー・メゾチントの作品群を制作した。本作においては、黒を主体とした背景の下部に、眠りに落ちた人を示す抽象化された形象が配されている。ここには、1978年の《凍れる歩廊》などに代表される70年代末までの壮大な叙事詩的イメージとは掛け離れた、人間主体の穏やかな叙情詩的イメージが読み取れよう。一方、メゾチントによって繊細な明暗が施された画面上部では、星ぼしがその空を照らす。こうした構想は、この時期の作品に共通する特徴であると同時に、かつての叙事詩的な作品群との関連も想い起こさせる。