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デイヴィッド・ホックニー「想像の風景」

©DAVID HOCKNEY  [C0894]

作者生没:1937 ブラッドフォード(英国)-
制作年:1969年
技法材質:リトグラフ
寸法:36.8 x 50.8 cm
エディション:73/75
署名・年記:マージン下辺中央「David Hockney ’69」

文献:David Hockney Prints, 1954−1977, exhibition catalogue, London: Petersburg Press [for] the Midland Group and the Scottish Arts Council, 1979, no. 67;寺門臨太郎編『筑波大学所蔵石井コレクション Ⅰ. 絵画』、筑波大学芸術学系、2011年、cat. 5。

所蔵番号:2010-FP-IS001

作品解説:
茫漠とした空間に敷かれた一枚の絨毯を思わせる薄茶色の方形の上に、大小4つのオブジェが無造作に配されている。画面左からの光によって、その敷物にはオブジェの影が落ちる。《想像の風景》というタイトルが示唆する通り、どこともわからない場所に置かれたオブジェたちは静謐で幻想的な空間を形作るのに一役買っている。1960年代後半、ホックニーはエッチングやアクアチントによって『C.P.カヴァフィの14編の詩のための挿絵』シリーズのような、人物を主体とした版画を制作する一方で、カラー・リトグラフで多くの静物も手がけた。部屋の片隅やテーブルの上に花瓶や筆記具などが置かれた、これらの作品はどこか非現実的な情調を湛えている。本作は、同年の《オブジェのあるガラステーブル》との関連を強く意識させるが、具体的な場所を示すものは何もない。他方、画面を満たす光は、ホックニーの作品を特徴づける、あのカルフォルニアの陽光の残滓でもあるかのようだ。