建築家

津賀洋輔さん/建築家

―現在のお仕事はどのようなことをされていますか

個人事務所でオフィスの設計を多く手掛けています。住宅や宿泊施設、コロナ前は展示のキュレーションやイベントの会場設計も手掛けていました。
今はみどり荘というシェアオフィスを作るプロジェクトをやっています。中目黒や表参道、日本橋などいくつか拠点を展開しています。
スウェーデン大使館のデザインも担当していて、展示会などのブースを作っています。

―建築の仕事を志したきっかけを教えてください

 大学入学当初は建築をやるつもりはなく、得意だった数学と英語だけで受験でき、自宅から近いという理由で社会工学類を受験しました。社会工学類の中でも、建築に興味のあった人たちと仲良くしていたので、面白いのかなと思って芸専が開講している建築の授業を取り始めたのがきっかけです。いろんな学類の授業が取れる筑波大の制度のおかげで、建築の面白さを知ることができました。
 社会工学類では都市計画を専攻していましたが、社会をマクロな視点で見るので、実際にものづくりをする機会がなかったんです。作ろうとしても、作り方なんてわからなくて、それは自分のやりたいこととズレているなと思ったので建築を深く学んでみようと大学院の芸術研究科に進学しました。
進学してからは、ちょうど大学の施設をリニューアルしている時だったので、ユリノキ保育所という平砂宿舎近くにある職員向けの保育所の内装と園庭の設計を担当しました。ものづくりが好きな仲間と一緒に実際に建物を作っていく感覚が楽しかったです。

―独立前はどんなお仕事をされていましたか

卒業後は主に大きな建築物を作っている事務所に就職して、大規模なシネコンやタワーマンションの設計を担当していました。でも「そもそもここにこんなに大きな建物を建てていいのか」みたいなことは設計だけやっていたら当然関われないじゃないですか。設計の前段階に関われないことがしっくりきてなかったですね。

その頃、中央線沿線のまちづくりをしている「リライト_D」という団体の方と話す機会がありました。「こんな大きな建物を何のために作っているのかあんまりぴんとこないから、会社を辞めようと思っています」と話したら、「辞めたら一緒に手伝いに来ない?」と言われて。会社を辞め、リライト_Dが主催する地域共創型の商業施設「コミュニティステーション東小金井」の設計を手伝いました。地元の人たちに出店してもらえる場所を安く提供することで駅と駅の間を盛り上げるプロジェクトで、デザインからお金のマネジメントまで全部リライト_Dが担当していました。当時はそういう会社が少なくて、新鮮で楽しかったです。やりたかったのはこういうことだなと思いました。

―大学院での体験の中で印象的なものはありますか?

やっぱり研究室っていいなと思いました。先生の人となりが常に見えてくるじゃないですか。担当教授は優しくて、学生との距離が近かったのが良かったなって思います。プロジェクトをやっている時も、理不尽な大人がいると学生目線で泣いて怒ってくれましたね。大学生活で研究室にどっぷりいたのもあって、社会人になってからも「学生と一緒にやるのは楽しいだろうな」という思いがありました。今も法政大の土木系の研究室の手伝いをしていますが、学生との関わり方や雰囲気作りは当時を思い出してやっています。将来的には、自分や社会のみんながやっていることを俯瞰して見られる教育職もやってみたいです。

―お仕事のやりがいや面白さはどんなところですか

やりがいは常にありますね。もんもんと悩んでいろんな人と相談して、試行錯誤した結果、最終的に形のあるものができるので達成感があります。

面白さは作る物のスケール感にあるんじゃないでしょうか。よくよく考えると人より大きいものを考えて作れる職業って少ないんですよ。普通の人はできないし、自分より大きなものを作るのはイメージするのが難しいので、それができるのは建築の特権です。

―仕事をする上で大切にしていることはありますか

伝えることです。やっぱり職人にどう作ってもらうかを伝えなきゃいけないし、お客さんにも伝わらないといけない。それは図面を書けば分かることもあるし、喋って伝えなきゃいけないこともある。どこまで専門的な内容を伝えたらいいのかも人によって違うし、特にお客さんは全然建築の専門家ではないから専門的なことをいかに分かりやすく伝えるかみたいなのはすごくあるんですよね。何を作るにしても、一人ではできないのでコミュニケーションをとても大事にしています。

―最後に筑波大の後輩たちにメッセージをお願いします

学生の時に「こういうことをやりたい」と思ったなら、会社に入って会社がやってほしいことをやるんじゃなくて独立して欲しいです。筑波大生はきっとそれができると思うんですよね。学生ベンチャーも作りやすくなっているし、結構面白いことができるはずです。

文・太田碧(芸術専門学群2年/筑波大学新聞記者)

津賀洋輔さん

建築家

2004年度 筑波大第3学群社会工学類都市計画専攻卒業

2007年度 筑波大大学院芸術研究科修士課程建築デザインコース修了

2020年度 東京工業大大学院理工学研究科博士課程建築学専攻満期退学