「祥 子 -seasonⅡ-」鎚谷紗希、大野香枝 2013年12月16日~2013年12月20日
会場:アートギャラリーT+
会期:2013年12月16日(月)~2013年12月20日(金)
出展者:鎚谷紗希(美術専攻日本画コース3年)
大野香枝(構成専攻3年)
祥 子 ダイニダン。
祥 子 ダイニダン。
実験的作品を展示します。
アートギャラリーT+は、筑波大学の芸術の学生、教職員の制作の発表の場として毎週個性溢れる展示が行われています。また、T+スタッフはそのような場の管理に加え、OB・OGをはじめとする芸術専門学群に縁のある作家を招いた企画展も不定期に開催してきました。
今回の展覧会では、本大学院を修了後、芸術系の特任研究員を務めているガラス作家・遠藤章子さんの作品を紹介します。遠藤さんは活発な制作活動・発表を行っており、本展覧会ではこれまでの作品のシリーズのいくつかからそれぞれ作品が出品されます。静かで透き通った空気感をもつ遠藤さんの作品たちがつくる空間に、どうぞ包まれに来てください。
■トークイベント
開催日時:11月28日(木) 18:15開場 18:30開始
会場:筑波大学6A208教室
入場無料
ゲスト:佐藤幸恵
遠藤章子さんと、同じく本学のOBでガラス作家である佐藤幸恵さんとの対談です。お二人それぞれの、ガラスという素材の面白さや制作時の思いなどを探ります。
【プロフィール】
遠藤章子
1985 新潟県三条市生まれ
2004 筑波大学芸術専門学群入学
2008 筑波大学芸術専門学群卒業
2010 筑波大学大学院人間総合科学研究科博士前期課程芸術専攻入学
2011 個展「空白のかたまり」 (Café et Galerie Moineau / 東京)
2012 筑波大学大学院人間総合科学研究科博士前期課程芸術専攻修了
International Glass Prize 2012「The OBJECT」 (Glazen Huis / Belguim)
個展「あるかたち」 (Café et Galerie Moineau / 東京)
2013 「かたちのないかたち」遠藤章子・柵瀬茉莉子 (Galerie PARIS / 横浜)
「Female times Ⅱ —新たな時代を刻む女性美術家達— 」(Bunkamura Box Gallery / 東京)
「工房からの風 craft in action」(ニッケコルトンプラザ / 千葉)
現在、筑波大学芸術系特任研究員として勤務中。(2012〜)佐藤幸恵
2005-2009 筑波大学芸術専門学群ガラスコース
2009-2011 富山ガラス造形研究所造形科
2012 Art Glass Solutions アーティスト・イン・レジデンス / シンガポール
展示・受賞歴
2008 「第4回KOGANEZAKI・器のかたち・現代ガラス展」 入選
2012 「EWAA イーストウエスト芸術大賞」ファイナリスト選出
個展 「泡と空気のあいだの夜話」 カフェギャラリーモアノ / 東京
個展 「それは未明に」 ギャラリーショップ水土木 / 東京
2013 個展 「ユクトコロ ソノ気色」 ギャラリー福果 / 東京
「EWAA イーストウエスト芸術大賞」ファイナリスト選出
他グループ展等
漠然とある事象にどうやって関係を結べるのか。
T+review
このタイトルを聞いてギャラリーの様子を見たとき、多くの人が「そのとおりだ」と思うのではないだろうか。ギャラリーの中では、天井からつるされた電球がランダムに点滅し、文字通り“ぴかぴかしてる”。壁には銀色のアルミシートや小さなペインティングがあり、床には砂が丸い形に敷かれている。電球が点滅すると、それらが照らされて“ぴかぴか”する。展覧会のタイトルが、ギャラリーの事象をそのまま説明しているようだ。しかし段々と、この直接的な描写に思えるタイトルが実は、ごく曖昧なものなのだと感じられてくる。
“ぴかぴかしてる”という言葉には主語が無い。我々は反射的にそれを3人称の、自分とは無関係に起こっている事象だと感じる―“寒い”“明るい”“ざわざわしている”のように―が、本当に“ぴかぴか”していることは私たちとは関係のないことだろうか。よく見ると、光っているのは電球はもちろん、アルミシートの反射やガラスへの映り込みも電球の点滅に伴って“ぴかぴか”しており、そして自分さえそれらの変化する光に照らされていることに気付く。自分以外のものだけではない、私たちも“ぴかぴかしてる”のだ。
自分とは関係なく起きていると思った事象に、いつのまにか巻き込まれている曖昧さ。この曖昧さは、作者がこれまでテーマの一つにしてきた“記憶”にも関わってくるものであるように感じられる。“記憶”を思い起こす時、誰がどうしたのか?何が変わったのか?何がどんな様子だったのか?などのようにと、私たちは自問する。その過程で、無意識のうちに自分とその出来事の関係が設定され、事実と想像は入り混じって、主語が記憶の中で変わっていたり主体が不明確なまま記憶が残ったりする。この不明確さは、今回の展覧会で“ぴかぴかしてる”ものを説明するときに生まれる曖昧さと似てはいないだろうか。身の回りの出来事は私たちと無関係に起こっているのではない。私たちはそれを体験している・記憶しているという時点ですでに出来事に巻き込まれており―つまり、その出来事と自分との関係をはかっており―、その記憶の中で“ぴかぴかして”いるのである。(岡野恵未子)
水を使ったインスタレーション作品です。
T+review
見慣れたギャラリーに黒いマイクが一本立っているのが見えた。近づいて中の様子を見てみると、マイクの前には白い小さな5つのボードが並べて置いてあるのがわかった。指示に従って備え置かれている白い砂を適当にいくつかのボードの上に振り掛け、マイクに向かって発声してみる。音を吹き込むと、順番に数段階の音階に変換されてボードに伝わり、振動して、それに伴い砂が動き、波のように不規則な模様を描いては滑り落ちていく。小さなギャラリーを無機質な音が満たして反響する。やがてそれは鳴りやんで、心地よい残響が耳に残るのみだ。どこか海鳴りを思わせるそれは自然と昔のことを思い出させる。
この展示のタイトルの一部でもある「伝播(でんぱ)」という言葉は、物事が伝わり広まること、また波動が媒質の中を広がっていくことを意味する。慣用読みとして「でんぱん」と読まれることも多い。この読みの代用表記が「伝搬」とのことらしいが、これらの境界線は非常に曖昧なものだ。
しかしここで私たちを取り巻く社会にもはっきりとした境界線をもつものはほとんどないのだと気づく。一寸先は闇、打ったボールは返ってくるどころか壁に当たっているのかすら分からないことも多い。されどここで確実に返ってくるものと言えば自分自身に対する問いや思いであろう。年齢や経験を重ねることによって、遠い昔に投げかけたこれらは時に思いがけない形で返ってくる。このプロセスは、今回の展示によく似ている。(山崎玲香)