「中村裕美子と未至磨明の二人展」 未至磨明、中村裕美子 2010年3月1日~2010年3月3日
会場:アートギャラリーT+
会期:2010年3月1日~2010年3月3日
出展者:
未至磨明 (構成専攻 ビジュアルデザイン領域4年)
中村裕美子 (美術専攻 書コース4年)
書コースとビジュアルデザイン領域の二人による作品制作です。
ありふれた彼女の日常、その肖像群。
書道作品の展示を行います。
どれも、インテリアとして利用できる、小作品です。
参加者は、書専攻の修士2年・学群4年です。立春を過ぎ、草の芽が萌え出ようとする先駆けの季節。
私たちも新しい出発を迎えます。
それぞれが力強く芽を出し、
枝葉を伸ばしてゆく決意を
表現したいと考えております。中央公園の市民ギャラリーでも、
(つくば市吾妻2丁目7-5中央公園)
下記日程にて並行して展示を行います。
2月16日(火)~18日(木)
併せて、ご高覧のほど、よろしくお願い申し上げます。
頭でっかちになって、ふと根本があやふやなことに気づき、解らなくなること。
についての、インスタレーション。
T+review
現在、美術の世界は、あらゆるものを巻き込んで膨張を続け、さまざまな状況(政治経済、利害関係など)が複雑に絡み合い、芸術とそれ以外のものの境界線がますます曖昧になっているように思われる。視点を定めてしっかりと立っていなければ、強風に煽られて、濁流に飲み込まれて、自分の意図しない方向へ、良くも悪くもどんどん流されてしまう。今回の展覧会では、そんな混沌とした状況の中で見失っていく「原点」をみつめなおし、混沌の中にも自分自身の場所を見出そうとする彼の行為そのものを作品と見なすべきであろう。
ギャラリーに入ると、鉛筆の匂いがつんと嗅覚を刺激する。ギャラリーの真ん中あたりに置かれた台の上には、鉛筆削りとちびた鉛筆、そして削りくずが山積みになっている。会期中、天井から吊り下げられたいくつもの白い額の向こうで、彼はひたすら白い壁を鉛筆で染めていく。書いて削って、書いて削って、の繰り返し。何を描くでもなく、まるで大きな画用紙に夢中でクレヨンを走らせる子供のように、彼はどんどん鉛筆を消費していく。わたしは、一見退屈で無意味に思えるこの行為に、見失いかけている「原点」と必死で向き合おうとする彼の姿を見出した。今やあらゆるマテリアルが芸術となり得る美術の世界で、鉛筆というたよりない筆記具は、芸術における「原点」であるといえる。そう考えると、天井から吊り下げられたいくつもの白い額は、作品という体裁を取り繕う(!)一方、錯綜する世間から自分を隔離して、じっくり「原点」と向き合うための防壁のようでもある。
現代の混沌の中で、迷子になりがちな自分をときどき顧みること、忘れ去られていく物事の本質(「原点」)を振り返ること、は非常に大切である。これらの行為は本来個人的であるが、今回のように展覧会という形をとることによって、彼自身だけではなく、見る者にとっても、ハッと気づかされるものがあったはずである。
(金沢みなみ)