「宇宙(よかろう)」展 鈴木沙織、中村純典 2011年9月26日~2011年9月30日

展覧会「宇宙(よかろう)」展が開催されます。
会場:アートギャラリーT+
会期:2011年9月26日~2011年9月30日
出展者:鈴木沙織(博士前期過程芸術専攻日本画1年)
中村純典(日本画OB)
生意気を言える体力も残っていません。
気がついたら年をとっていました。最近疲れがとれません。
寝ても食べても風呂に入っても相応に疲れます。横になって、無為に過ごすのが良いようです。
T+review
キャンバスに描かれた世界たちをのぞいてみると、その中では色がにじみ、さまざまな色彩が互いに混じり合って、ぼんやりした記憶のような印象を受ける。大きすぎず、そして強すぎないサイズの画面たちが並ぶ展示風景は、まるでくるくると切り替わっていく、心の中の風景のようだ。
向かって左側の作品群は、鳥居や、狛犬のような動物が描かれているものがあり、神社のような日本的なイメージを感じさせる。また、作品群全体にわたって朱色や緑青のような緑色が用いられているので、描かれているものがにんじんなど必ずしも日本的なものではないパターンでも、神社的な雰囲気を強めている。この作品群は、正方形のキャンバスの中に正方形で箔を押されているため、一つの画面の中にいろいろなシーンが存在しているように見え、その中から浮かんできたあるシーンがクローズアップされているように表現されている。しかも、主として描かれているものの周りだけがぼんやりと明るく、まさに輪郭のはっきりしない記憶のようである。漠然としているがいつのまにか、確かに私たち日本人の心に存在するもの、この場合は神社であるが、それが浮かび上がる様子を伝えていると感じた。
右側の作品群は、左側の作品と印象が似ている。つまり、小さなころに見た風景を思い出せるような作品たちだ。しゃがんで池をのぞき込んでいるような視線で描かれたハスの花。低い目線から見上げて描かれた、空にその姿をくっきりとさらす電信柱。見たことはないはずなのに懐かしい、そして少しさみしさも感じさせる景色たちである。この作品を観て感じるさみしさは、幼いころ夕方になると感じていたさみしさに似ている気がする。家へ帰らなくてはいけない切なさ、知らないものに対する小さな不安を思い起こさせる。
これらの作品のぼんやりとくすんだ色彩は、はっきりとはしていないが心に留まっている懐かしいものの印象と近く、それを浮かび上がらせてくれる。(岡野恵未子)