『九州展№005~90309~』新直子,他 2009年12月14日~2009年12月18日

九州展 DM
展覧会『九州展№005~90309~』が開催されます。
会場:アートギャラリーT+
会期:2009年12月14日~2009年12月18日
出展者:
河瀬茜音
梅田友利
中村友貴
平良希望
長友秋菜
新直子
福田健二
内ゆき
武本沙織
池田傑
上脇田直子
権藤奈保子
中野憲一
中森祐介
灰塚みゆき
莫根美穂
山下亮磨

九州出身者による、平面・立体の小作品展示。

T+review

ギャラリーの扉を開けると、色も形も素材も大きさも、全く異なる作品がずらっと並べられていた。九州展90309は学群の1年生が質のいい展示をすることで先輩に刺激を与えようと2003年に1年生2人で始まった。日本画、洋画、彫塑、書など領域と学年を飛び越えた17人それぞれの個性がひしめき合い、1人または2、3人で同じテーマの下に展示を行ういつものギャラリーにはない、目新しさや騒々しさ、ワクワク感があった。特に私の印象に残った2作品を取り上げたい。
≪湿潤な緑の海へ≫森永 亜樹(彫塑)
絵や書の平面作品が並ぶギャラリーに、ぽつんと現れたかたつむり。金色に輝く体は金属で、かたつむり本来のにゅるっとした体とは一見相反するようだが、光が当たることで独特のぬめぬめした質感が出ていた。殻は体とは対照的にざらざらとしていて、苔のような緑や白が混ざり合い、年月の経過を感じさせる。軟らかい体でのそのそ歩くかたつむりも、実はいくつもの苦難を乗り越えてここまで来たのではないだろうか。少し腰をかがめてかたつむりと同じ目線で見てみる。その瞬間、私の世界にかたつむりが入ってきた。ぴんと立てた触角はこちらに伸びていて、まるで私に挨拶しているようでもあり、理想とする場所に向かって一生懸命進んでいる途中のようでもある。私は進行の邪魔だったかもしれない。
≪静かな夜≫莫根 美穂(日本画)
和紙のような少し毛羽立った素材の上に、染み出したような微妙に色みの異なる様々な青と白い四角がのせられている。表面はきらきらしていて、日本画ならではの色彩の繊細さと美しい青に吸いこまれそうになる。最初白い四角が建物の窓に見え、もやがかかった夜の街並みに見えたのだが、じっくり見ていくと薄い青から濃い青の方へと視線が誘われていく。一気に画面に奥行きが生まれ、描かれてはいないが確かに存在するもっともっと奥にある世界に引きずり込まれる。それはまるで私が今いる現在からぼんやりとした過去にタイムスリップしていくような感覚であった。何もかもが新鮮できらきらしていた幼い頃の記憶が蘇る高揚感や懐かしさと同時に、未知の世界に連れていかれる不安と寂しさも感じた。
 九州展90309は出品者が全員九州出身という点以外何も共通したものがないように思える。しかしどの作品をとっても見る者はその世界に引き込まれてしまう。ギャラリーの小さな空間の中で万華鏡のように様々な世界を体験することができる。5回目を迎える九州展は今回で一度終了となる。生まれ変わった九州展でどんな世界に出会えるのか、今から楽しみだ。
(武藤かおり)