「竹中大悟 個展『All I see』」 竹中大悟 2015年5月18日〜5月22日

展覧会「竹中大悟 個展『All I see』」が開催されます。
会場:アートギャラリーT+
会期:2015年5月18日(月)~2015年5月22日(金)
出展者:竹中大悟(人間総合科学研究科 芸術専攻 彫塑領域
博士前期課程2年)

主に昨年制作した、彫刻作品の展示です。

T+review

彫刻作品には、事物の輪郭線や質量を厳しくとらえている作品も多いが、こういった作品を見たとき、私は作品自体に高い精神性を感じるというか、「我々人間とは決定的に異なる高潔な存在」という印象を受けることが多い。美しく決して手の届かない存在に、私は思わず畏敬の念を抱かされる。

対して、今回の展示作品「All I See」は、人がまとう雰囲気ごと人を表現したような、柔らかな彫り込みや色彩が印象的であった。ふんわりと柔らかそうでいて、しっかりと質量を持っている。人間と同じだ。私はギャラリーに入る前から「彼」の視線に思わず警戒心を抱いてしまっていたが、すこし安心して観察を始める。

しかし適度にデフォルメされた人間達には、我々生きている人間にはない違和感が存在し、じっと見つめているうちにどこか不安な気持ちになってくる。親しみ易い雰囲気に引き込まれ忘れてしまっていたが、私は彼もまた「我々人間とは決定的に異なる存在」だったということに気付く。気付いた瞬間、彼が何かとても恐ろしいもののように感じられる。私たち人間のような姿をしていて、しかし異なる得体のしれない存在。花に擬態するカマキリのように、私たちが親しみを感じて寄ってくるのを舌なめずりして待っているのかもしれない。そんなあらぬ想像を膨らませた私を彼はただ静かな目で見つめていた。

事物はそこに存在するのみで様々な情報を発信していて、人間はそこに意味や共感を見出そうとする。彼らは物を言わないから、投げかけた言葉は決して返ってくることはない。返ってくるとしたら、事物に投影した自分自身の言葉だろうか。自分自身の理解の範疇に無理やり他の物を入れようとすると、結局のところ自己投影に行き着く。彼らの視線に恐れを抱くのならば、自分のどこかに罰されるべき後ろめたい部分を持っているということになるのだろう。なるほど、彼はすべて知っている。彼はすなわち私自身なのだから。(山崎玲香)

All See