鑑賞学習の熟達理論

 鑑賞レパートリーの観点に基づいて,鑑賞文の熟達化を次の3つの観点から定義しています。
 一つは,鑑賞行為のレベルの高まり:6つの鑑賞行為に設定した三つのレベルです。
 二つめは,鑑賞スキルの種類の多様化:4つの作品要素と 6つの鑑賞行為を組み合わせた 鑑賞スキルの種類です。
 三つめは,鑑賞文における文脈の深まり:文脈は,多様な鑑賞スキルが関連づけられて構成されるため,鑑賞行為のレベルと鑑賞スキルの種類の判定にも反映されますが,ここでは文と文の間の関連性の数によって指標化します。
 このような三つの指標を活用することによって,鑑賞者が鑑賞文を作成する際の状況を診断的に分析することが可能です。そして,鑑賞者が鑑賞行為のレベルとしてどの状況にあり,どのような鑑賞スキルをどのくらい使いこなし,そして鑑賞の文脈をどのくらい深めているのかという分析の観点は,鑑賞文作成に限定せずに広く美術鑑賞学習全般での活用も考えられます。