作者生没:1911 宮崎 – 1960 東京
制作年:1950年
技法材質:フォト・デッサン[フォトグラム]
寸法:42.0 x 53.0 cm
署名:左下に署名・年記「Q.Ei/1950」
展覧会歴:「紙上の技法学 筑波大学所蔵 石井コレクション」2012年1月7日-2月19日 武蔵野市立吉祥寺美術館 cat. 14。
所蔵番号:2010-JP-IS003

作品解説:
瑛九は1930年からフォトグラムの独自な試作をはじめ、これを「フォト・デッサン」と名づけた。光を遮断した空間で、まず印画紙に型紙などを載せ、上から懐中電灯で光を当てて「描画」する。印画紙を現像すると、光の当たった部分は黒く影の部分は白く現れ、光の当て方と物の置き方を工夫することで表現には無限の可能性が生じる。これについて瑛九自身は「欲している画像を形成しようと精神を集中する絵画的な造形精神」と説明した。
《街角にて》(cat. 37)には、型紙と網、そして画面の右下には小枝の使用が確認できる。感光時間を調整して生まれた黒白の濃淡が、かつて見たことのある朧な情景に似た懐かしさを添えている。また、アクロバティックなポーズをとる女性のシルエットが特徴的な《題名不詳》(cat. 36)では、背景がメロンの表皮を思わせる有機的な模様で埋め尽くされている。おそらく独特の六角形をなすチュールの網目を利用し、複数の布をかさねたのだろう。瑛九はエロスを主題としたフォト・デッサンをしばしば制作したが、《愛》(cat. 35)は、その描画プロセスとも相まってか、他人の情事を覗き見てしまったような気まずささえ感じさせる。じっと見つめあう男女の顔とは対照的に、黒白を反転させた首より下は、激しい情欲の真実をあからさまにしている。