研究概要

2000年に筑波大学附属図書館から狩野探幽筆「野外奏楽図」「猿曳図」屏風・六曲一双、狩野尚信筆「李白観瀑図」「剡渓訪戴図」屏風・六曲一双等が新たに発見された。これを記念して「筑波大学附属図書館所蔵 日本美術の名品―石山寺一切経、狩野探幽・尚信の新出屏風絵と歴聖大儒像」展を開催し、この時に附属図書館所蔵の狩野山雪筆「歴聖大儒像」六幅と「賢聖障子図」14面も合わせて公開された。展覧会と同時に調査も進み、「賢聖障子図」が湯島聖堂大成殿内陣壁画として掲げられていた「賢儒図像」扁額16面(うち2面欠失)の写しであることが判明した。関東大震災の折に湯島聖堂は本尊孔子像のほか四配像、扁額等多くを焼失したため、筑波大学芸術系の美術史、彫塑、日本画、情報デザイン教員が中心となって湯島聖堂礼拝空間の復元研究が始まったのである。
2004年三菱財団研究助成「美術資料による江戸前期湯島聖堂の研究」によって、2005年に筑波大学附属図書館で「江戸前期の湯島聖堂 筑波大学史料による研究成果の公開」を開催して、内陣壁画並びに孔子像復元成果を展示。以来、湯島聖堂内陣諸像の復元研究が芸術系教員チームによって2017年まで継続した。その成果は、多数の報告書の発行によって結実している。
2019年度からは、新たに「儒教美術史」という美術史研究の枠組みを提唱し、東アジアに共通する儒教思想に基づく美術の研究を推進する。