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手づくり古民家再生住宅

里山保全の建築プロジェクト

担当教員:安藤邦廣(筑波大学教授)
藍染めワークショップ
藍の播種から畑づくり、定植、水やりなどの事前準備を学生が行った上で、市民参加により藍の生葉染めのワークショップを行った。ワークショップで は、真壁の藍保存会を指導者に迎えて、参加者は藍の刈り取りから、水洗い、染色を体験した。植物の生育には予測できないことも多く、管理にも手間 がかかるため事前準備は難しかったが、生活環境を自らの手でつくることにおいては、家づくりに比べれば染め物は入門的な方法として、手軽で有効で あるということが確認できた。
そばづくりワークショップ
有機肥料としての豚糞施肥をはじめとした畑づくりから、地域住民の指導と農林技術センターの教職員の指導も得て、学生が事前準備を行い、市民参 加によりそばの播種、収穫、そば打ちのワークショップを行った。そば打ちをしたそばの試食会では、移築した古民家で使われていた膳、椀の漆器を使 って茶の間、広間を続き間として利用して大人数で食す民家の食事風景を再現した。 そばは里山の代表的な農産物であり、そばの栽培からそば打ちまでを一環して体験することで、里山の環境保全の意味やその重要性を実感するよい機 会となった。
茅葺きワークショップ
学生の参加により、前年の秋につくば市内で刈って保存しておいた茅を利用して、約10坪の釜屋の茅葺き屋根を職人の指導により、学生スタッフと市 民の参加により会期中に葺きあげた。あわせて茅葺きの完成を祝うぐしまつり≠おこない、地域住民の指導で昔ながらのかまとせいろをつかっても ち米を蒸し、杵と臼でもちをついて行ったもちまきには多数の市民が集まった。 茅の調達にはじまり、茅の保管、運搬や竹、篠竹、ワラの調達など、ワークショップ開催のための事前準備の実働負担、高所作業を伴うワークショップ となるため参加者の年齢制限を行い事故のないよう細心の注意を払う必要があったこと、事前申込者によるワークショップ開催の雨天対応など難しい 面もあったが、かつては身近な材料として用いられていた茅、ワラなどの草で屋根を葺く貴重な機会となった。また、これはワークショップにとどまらず、 維持管理に苦労している茅葺き所有者や茅葺き技術を習得したい市民と職人を引き合わせる機会にもなり、その後も交流が続いている。
床塗りワークショップ
古来からの自然塗料であるベンガラと柿渋を利用して、市民参加により古民家再生住宅の主屋の床をさまざまなパターンに塗り分けた。 床塗りは家を維持管理する上で基本的な行為であり、さらに住み手が日常的に行うことにより、家が年数を重ねることによってなお価値を増すための基 本的方法として効果も高いことが確認できた。
土壁づくり
土壁つくりでは、事前に伐って準備しておいた竹と移築前の古民家の壁に使われていた竹小舞と土を再利用して、竹小舞下地をつくるための竹割り、 小舞かきから、土づくり、わら切り、土壁塗りまでの一連の工程を職人の指導のもと、学生スタッフと市民参加により行った。土壁はほとんどが再利用 材であり、およそ100年前の土がさらに優れたものとして再生可能であることが確認でき、資源の循環を実感するよい機会となった。
土間たたきワークショップ
土間たたきでは、砂、土、石灰、にがりなどの材料を配合し、土間に流し込んで参加者が叩き棒やたこでたたきしめ土間たたきをつくりあげた。土間た たきは単調な作業で重労働にみえるが、やってみると子供たちがこぞって参加し、飽きることなくたたき続ける姿が印象的であった。土の持つ不思議な 魅力が再発見できた。
小屋づくりワークショップ
間伐材と間伐材を製材した際にでる「ばた材」と呼ばれる部分を利用して、動物小屋づくりを行った。穴堀りスコップで穴を掘り、間伐材の杭をかけや で打ち込み、ばた材をはさむという、材料さえあれば特殊な道具がなくてもつくることのできる小屋を提案し、市民参加で行った。 仮設物をつくるための素材として間伐材は非常に扱いやすく、適した材料であることを実感する機会となり、今後、生活環境を自らつくる可能性を確認で きた。間伐材の利用については、デザインによってさまざまな利用法が考えられるという課題がまだ残されている。
竹細工ワークショップ
職人と学生が講師となり、竹細工での一輪差し編み、コースター、竹とんぼの制作を市民参加で行った。同時に古民家の中に籠やざる、魚籠などの竹細 工を展示し、今は石油化学製品にかわっていったさまざまな生活道具としての竹細工についての講習も行った。古民家そばの広場では、竹馬の貸し出 しも行い、かつては生活の大部分を占めていた竹との暮らしの一端を市民が体験した。 竹は現代の里山の資源の中でも最も未利用なものとして竹林は放置されているのが現状である。それに対して、今回のワークショップでは、竹の優れた 特性を再評価し、新たな需要を生み出す上で貴重な機会を提供することができた。
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