湯華の交わり

About

家のお風呂や銭湯、温泉の場に必ず存在するもの、それは湯気である。湯気は油面から勢いよく発生し、消えていく。掴めないが素肌で感じる。私はそんな湯気に注目し、湯気の持っている儚なさを照らすことのできる照明を作ることにした。

照明「湯の花の交わり」はお風呂空間の上部に設置することができる。ファンによって湯気を吸引する垂直方向のパイプと、LEDライトのついた水平方向のパイプから構成されている。また、水平方向のパイプは垂直方向のパイプを繋げる、構造としての役割も兼ねている。垂直方向のパイプがとらえた湯気は、水平方向のライトと交わることによって、空中で美しく照らされる。照明の全体的なデザインは湯の華から大きなインスピレーションを受けている。湯の華とは、温泉の不要成分が析出・沈殿したもののことを指す。地域によってその種類や効能は異なるが、今回は別府温泉の湯の華結晶に注目した。別府の湯の華は明礬を主成分としており、繊維的な見た目と光沢を持つ霜柱状の結晶を作るのが特徴的である。そこで、照明の水平方向のライトのパイプにはPPテープをプラ板で挟んだ材を使用し、繊維的な美しさを表現した。これにより、光が材を透過することで、独特な輝きを見ることができる。また、LEDライトの色も湯の花に由来するものである。白のライトは結晶そのものの透き通るような色、青のライトは明礬温泉の神秘的な湯の色を表現している。

「湯華の交わり」は単体ではもちろん、連ねることによってより神秘的な美しいお風呂空間を作ることができる。美しく交わったたくさんの湯気と光は、人々の心を癒し、また柔らかく照らすことだろう。