ロン・ミュエク(Ron Mueck)による主題

デュエイン・ハンソンと同じくスーパーリアリズム作家のロン・ミュエクは、人体があたかも生きているように表現しています。個人の物語を背景として取り扱う主題は、主に母や妊婦、新生児による人体です。

ミュエクは、1958年オーストラリアのメルボルン生まれです。おもちゃ工場を経営する両親の元で育ち、幼い頃からフィギュアの材料と技術に熟知していました。80年代の半ばからジム・ヘンソンの下でセサミ・ストリートなどの人形の制作に携わり、児童向けテレビ番組の操り人形制作会社に勤めました。この経験はミュエクの特殊造形技能を高め、1995年頃からは自身の作品制作に専念しました。2001年のヴェネチア・ビエンナーレに出品した巨大な少年像、《ボーイ(Boy)》1999年は、世界中の注目を集めました。ロンドンのサーチギャラリーに紹介されたミュエクは、初個展を開催して高い評価を得ました。その時の作品が、《死んだ父(Dead Dad)》1996-1997年です。サーチギャラリー企画のセンセーション展に4年間出品し、ロンドンのナショナルギャラリーにて個展を開催するなど国際的な作家です。
内部着色を活かしたロン・ミュエクの作品は、UP樹脂やシリコーンゴム素材等を使用した人体の立体造形を制作しています。現実の世界を再現することを追求してスーパーリアリズムの視点を変えました。ミュエクが生み出すスーパーリアリズム表現は、その造形制作に対する執着心からきています。

ロン・ミュエク《ボーイ(Boy)》1999年
ミクスト・メディア
D4,900×W2,400×H4,900 mm 
デンマーク アロスオーフス美術館蔵
(Owner:Aros Aarhus Kunstmuseum, Aarhus,Denmark) 
村田大輔編、『ロン・ミュエック展』、2008年4月26日-8月31日、金沢21世紀美術館、
有限会社フォイル、2008年、p.47.