Details

TITLE :

ほたるぶろ

CREATOR :

佐藤 紀乃香

About

今回、私は「照らす×お風呂」というテーマからお風呂における人の心理や動きを照らすというコンセプトで「ほたるぶろ」という作品を提案した。公共浴場という場をパブリックな空間であると同時に非常にプライベートな空間であると捉え、そこでの人の無意識の行動を視覚化することで行動の元となった心理をもあらわにすることができるのではないかと考えた。

それらのことから、私は床面に蓄光シートを用いて、お風呂の利用者が手持ちのライトを持って歩くことで光の残像を残す様子を蛍になぞらえ、にんげんほたるの観察ができるようにした。これにより「ほたるぶろ」は空間軸と時間軸の2つの軸を持つこととなった。

空間軸として、「ほたるぶろ」では利用者が光を向けたところが蓄光されて光り、その経路がマッピングされる。

時間軸として、蓄光シートの残光時間(しっかりと蓄光した場合約4−8時間と言われている)と光の減衰を利用して、床に人の動きの様子が表される。これは常に直近数時間までのもので、また常に変化し続ける。人通りや滞在時間の長い場所ほど床が明るくなり、残光時間も長くなる。

お風呂は裸の空間であるため、目的を達成しつつも、他人の身体も自分の身体も照らし出さない工夫が必要である。そこで「ほたるぶろ」専用に利用者のための手持ちのライトを考えた。下の写真がそのライトの様子である。ライトの照らす光は下向きであまり拡散しないようになっている。全体の形はほたるをイメージし、これを「ほたるライト」と名付けた。ライトの白い部分は柔らかく光を通すため入浴時に浴槽の縁に置いても存在感を示すことができる。また、丸い形の持ち手はしなるため、手首の多少の動きでは光の向きが変わってしまう心配がない。

利用者はお風呂の受付時にこのライトを受け取り、浴室内ではこれを持って移動する。利用者の足元の安全の確保と、「ほたるぶろ」の空間を作り出すという2つの目的をこの「ほたるライト」は担っている。