文字というのは、その土地でしか使われていない言葉をその土地に合わせたかたちで表してくれる記号だと考えます。やないづに訪れて町中を歩いたとき、福満虚空藏菩薩圓藏寺の石碑や千社札、使われていない建物の看板、久保田三十三観音のお地蔵様に彫られた数字など多くの文字に触れました。私は、文字の形というのは紙に書かれた姿だけではなくそれを書く時の腕の動き、身体のねじれ、人の呼吸など様々な姿をその軌跡からみることができると思っています。立体にした文字の形を通して、その軌跡や形に潜む動きを思い浮かべてもらえたらうれしいです。また、やないづの地は自然が豊かです。池に掛かる赤い橋、それを取り囲む山々、池へと向かう小川など、目を見張る光景が数々在ります。私が現在住んでいる筑波には川があまり見られなかったので、やないづの澄んだ川や池の情景が今でも記憶に残っています。自分の故郷に似ている情景に、安心やなつかしさを感じました。

総合造形領域 大塚友貴

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