日本サイエンス・ビジュアリゼーション研究会
イベント
2021年
出題:
八木勇治

専門領域:
固体地球物理学

イラスト制作:
内海士門 / 井上史央里 / 川島志織 /
島田渚 / 前田さくら /
LOPEZ VARGAS NICOLAS /
追川優菜 / 山中音琴 / 大久保智子 /
岡田麻鈴 / 計見左京 / 塚本京平 /
藤倉裕子 / 高橋帆波 / 笹倉綾乃


地震のサイクルを擬鯰化して描く(アート重視のイラスト)

目的:サイエンスカフェやHPで使用するイラスト
対象:地学に興味を持っている一般の方

問題

安政大地震後には地震を起こしたと噂が流れていた大鯰をモデルにした錦絵が描かれた。明治時代になって、地震学が発展していくに従い、地震が長い時間をかけて地下に蓄えられたひずみを短時間で解放する現象であることがあきらかになった。この経緯を踏まえ、地震の準備から発生の過程を擬鯰化したものを使って表現すること。

解説

地震という、突発的に発生する現象を理解することは、科学が十分に発展していない時代にはとても難しい問題であったに違いない。科学知識を持たない時代の人々は、地震の原因を様々な動物や出来事に関連づけて解釈している場合が多い。例えば、江戸時代の日本では鯰が地震の原因であると考えられており、鯰絵というものが描かれた。安政大地震後に描かれた鯰絵を見ると、地震という現象を破壊するものという画一的な受け止め方ではなく、その後の復興による景気回復といった側面もとらえていることが分かる。地震とはどういう現象なのかが明らかになったのは、1906年サンフランシスコ地震以後である。アメリカ西部には、太平洋沿岸に沿ってサンアンドレアス断層が横たわっており、この断層の一部で蓄積した歪みがサンフランシスコ地震で解放された。この地震は、現在のような地震対策が施されておらず、かつガス網が整備された都市を襲った。そのため、ある家庭の台所でつけた火が大火災をもたらし、多くの財産が失われたことでも有名である。この地震を調査したReidは、大地震後に現れた地表断層を観察し、地震の発生要因を弾性反発説で説明した。弾性反発説では、地下に断層を動かすような力が働いており、それによって歪みが蓄積して、その歪みが地震によって解放されると考えられている。この説は、現在でも広く受け入れられている。

評価のポイント

鯰絵と同様にユーモラスに地震のサイクルが描かれているかについて評価する。また、地震サイクルについての概略がわかるように描かれているものを評価する。