日本サイエンス・ビジュアリゼーション研究会
イベント
2020年
出題:
丹羽隆介・島田裕子

専門領域:
動物生理学・動物発生生物学・遺伝学

イラスト制作:
宮本紫帆 / 伊藤紗月 / 小野田女日名 /
丸田光希 / 野澤楓佳


生体の恒常性や変容性の制御における臓器連環(アート重視のイラスト)

目的:生体の恒常性(ホメオスタシス)や変容性(トランジスタシス)の制御における臓器と臓器の相互作用=「臓器連環」の重要性を、高校生以上の一般人および分野外の学者に伝えるためのイラストを作成する。
対象:高校生以上の一般人および分野外の学者

問題

環境に応じて生体の恒常性(ホメオスタシス)や変容性(トランジスタシス)が制御される際に、臓器と臓器の相互作用=「臓器連環」がいかに重要な貢献をしているのかを、分かりやすいイラストで表現してください。

解説

自然界において生命体は、時々刻々と変化する環境にさらされながら生きています。そして生命体は、環境の変化に対しても自身の状態を一定に保つ恒常性(ホメオスタシス)と、逆に環境の変化に応じて自身を変えていく変容性(トランジスタシス)といった、メカニズム(制御システム)を有しています。近年の研究の進展によって、ホメオスタシスとトランジスタシスの制御に際して、個体を構成する様々な器官の間で神経やホルモンを介した信号が交され、多くの器官が複雑な情報交信をしていることが示唆されています。こうしたネットワークのことは「臓器連環」とも呼ばれ、このネットワーク構造の破綻が病気の発症とも密接に関連することが示唆されつつあります(春日ら2019;東北大学2014)
ヒトやマウスを用いた研究はもちろん重要ですが、キイロショウジョウバエという昆虫を利用した研究も臓器連関のメカニズムの解明に非常に大きな役割を果たしています(Droujinine & Perrimon 2016)。私たち自身のグループも、キイロショウジョウバエを用いて世界に先駆けて以下のような研究成果を挙げました。
- サナギ化のタイミングが栄養に応じて調節する際の、神経系と内分泌器官の相互作用
(Shimada-Niwa & Niwa, 2014;筑波大学プレスリリース2014)
- 卵を作るための幹細胞が交尾に応じて増殖する際の、腸と卵巣の相互作用
(Ameku et al. 2018;筑波大学プレスリリース2018)
今回のイラストでは、臓器連関が生体にとって非常に重要であることを、一般向けにも分かるように表現してください。この課題が達成されていれば、どのような研究材料に基づく研究成果に基づくテーマでも構いませんし、抽象的な内容であっても構いません。

評価のポイント
1.  臓器連環の重要性が表現できているか。
2.  魅力的でインパクトのある絵になっているか。