11.生徒と教師の暖かい人間関係

 B教諭の教え方は大変リラックスしたものであったと一方では思ったが、他方では、偶発的ではない生徒の反社会的あるいは、分裂的な態度を目撃した。A中学校の教職員は、「しつけ」についての私の執拗な質問にまごついたり、当惑したりしたようであった。

 比較教育の文献には、日本の学校における躾の問題の欠如は、以前に述べたことのある伝統化された子供の躾のパターンの結果であると説明されている。極度に大切に育てられ、甘えさせられた母子関係、そして、対決や腕力の回避によって特徴づけられているものが、基本的かつ独特な日本人の愛への強い衝動や「甘え」(土井,1971)として知られる他への依存を引き起こしていると言われている。優れた母親は、両親や他人への従順さや優しさ、有益さを賞賛し奨励する(ヘンドリー,1971,p.176)。

 小さい子供のしつけに関する日本の文化的パターンは、子供が高等学校に入るまでは大変厳格なので、個人に向けられていた勤勉さは、もっぱらグループのより大きな利益のために捧げられると報告されている。

 日本人は人間関係において、かなり長期間にわたって、あらわな対決や暴力を避ける状態にある(安田,1987,p.103-6)。

 暖かみのあるエチケットとコミュニケーションのパターンが、日本の指導の特徴的な型であるといわれている(ホワイト,1987,p.65)が、B教諭の以下のような授業で明らかであった。彼は、生徒に対して、より権威的である英国あるいは北米の多くの美術教師よりもずっと支配的でないように見えた(例えば、始業や終業にたいして)。議論に介在することもずっと少ないし、騒々しさをコントロールする気持は、比較的低いように思えた。生徒の指導は、殆どいつもグループに向けられており、私は一対一の指導を目撃したことは殆どなかった。


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