筑波大学 芸術系 教授 山中 敏正

2016 年4 月、楽天技術研究所と共同研究を検討する機会をいただきました。筑波大学は建学の理念を「開かれた大学」として44 年前に創設された大学です。すでに半世紀に近い歴史をもっていますが、建学の理念は脈々と受け継がれており、研究科や専攻、分野の中に閉じこもることの少ない研究教育環境が大きな特徴となっています。そのような環境でなにができるのか、あるいはやりたいことを実現するために組織をどう使うか、といった議論をさせていただいた結果、共同研究を開始させていただくことになりました。
店舗・消費者体験について先進的な研究開発を行いたい、という目標設定に基づき、筑波大学のキャンパス内に「未来店舗デザイン研究室」「未来店舗デザイン実験室」を配置させていただき、客員准教授として楽天技術研究所の益子宗先生をお迎えすることができました。研究室、実験室の設えを終えた段階では、研究開始についてプレスリリースを筑波大学と楽天株式会社の連名で出させて頂き、各方面から大きな反響をいただきました。
実質的な研究はまだ始まったばかりですが、すでにこの冊子に掲載されているような研究の芽が出ています。今後も筑波大学の組織的な可能性を活かしつつ、先駆的な取り組みをすすめていきたいと考えています。今後の研究にご期待ください。

楽天株式会社 楽天技術研究所 シニアマネージャ
筑波大学 芸術系 教授 益子宗

国際的に高水準な研究と教育を行う筑波大学と共に、2016年に未来店舗デザイン研究室・実験室を立ち上げました。
科学技術の目覚ましい発展や高機能なコンピュータの登場により、私たちは便利な生活を享受する一方で、改めて人々の有機的な関わりやコミュニケーションの重要性を実感しています。これは、店舗デザインにも同じことが言えます。
「未来店舗デザイン」という名称には、売り買いの手段だけでなく、それに関わるあらゆる人同士のコミュニケーションをデザインする、という意味が込められています。
同時に、ただ売り買いの媒介をするのではなく、買い物をする楽しさ、商い(あきない)の楽しさを大切にし、「新しい消費体験の創造」を研究領域の大きな柱の一つとして据えてきた当社の想いも込められています。
楽天では1997年に楽天市場を開設して以来、店舗との絆を築き、現在では45,000を超える店舗にご参加いただけるほどになりました。私たちの研究は、このような素晴らしいパートナーである店舗の経営者・従業員様にも寄与するものでもありたいと考えます。そのため、時に私たちは技術と体験のデザインを通じて、店舗が抱える働き方の課題にも向き合います。
この先、何年にも渡り、商いを通じて社会とのコミュニケーションを楽しんでいただけるように、店舗の皆様の知見や経験知を最大限に活かす新たな仕掛けにも挑戦します。
本共同研究では、研究開発の知見とデザイン思考を組み合わせ、プロトタイプから実証実験までを包括的に扱います。そして切実な社会課題に対して、さまざまな分野の知恵と切り口を結集し、problem based learningという教育的アプローチを軸にしながらも、常に「Fun」を喚起させるソリューションを提示していきたいと考えます。
筑波大学と共に作り上げる社会実装の新しい方法論にぜひご期待ください。

本研究室は、筑波大学と楽天株式会社との「未来店舗デザイン」特別共同研究事業の活動の一環として運営されています。

※特別共同研究事業は、企業等からの資金を原資に企業等の研究者を雇用して学内の研究者とともに研究グループを構築し、双方が対等の立場で共通の課題について共同して研究を行うことによって、優れた研究成果を産み出すとともに社会貢献を促進する制度です。